日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[D] 発生予察・被害解析

2024年3月30日(土) 09:00 〜 10:30 D会場 (白橿2)

09:30 〜 09:45

[D-29] 物体検出モデルによる茶園のチャノホソガ幼虫の齢構成推定

◯須藤 正彬1 (1. 農研機構・植防研)

深層学習による画像からの物体検出は、農業害虫の個体数カウントへの応用が活発に研究されている。しかし規格化された粘着板トラップ等に比べて、撮影条件が一定とならない生態写真を入力に用いた場合の精度確保は困難であり、ほ場レベルでの防除適期判定を目的として、生産者が容易に画像診断を使える段階ではない。茶の主要害虫であるチャノホソガは、幼虫の発育段階に応じて茶葉に特徴的な形状の食痕を作る(卵→潜葉→葉縁巻葉→三角巻葉)。本研究では茶園で撮影したデジタルカメラ画像から幼虫をカウントし、齢構成を推定するモデルの開発を試みた。のべ3512枚、14719オブジェクトの教師画像を独自に撮影し、MS COCO形式のポリゴンマスクを付与したデータセットを整備した。既存アルゴリズムでの訓練結果として、三角巻葉ではMask R-CNNでmAP50_95 = 54%、YOLOX-lで66%、モバイル向けのYOLOX-tinyでも52%と実用的な精度を得た。しかし発育段階が早期であるほど低精度(YOLOX-lでも卵5.6%、潜葉21%、葉縁巻葉32%)に留まり、若齢時の防除適期判定は現状で難しいと考えられた。理由として対象の小ささに加え、卵や潜葉が葉裏にあるため撮影枚数を確保できなかったことが挙げられる。