日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[G] 環境・多様性・保全

2024年3月30日(土) 09:00 〜 10:30 G会場 (小会議室8)

09:15 〜 09:30

[G-17] 外来アリと在来アリが利用する気候ニッチと土地利用ニッチの比較

◯池上 真木彦1 (1. 国立環境研究所琵琶湖分室)

外来種の多くは人里など攪乱環境に多く出現する傾向がある。しかしこれは幅広い土地利用環境を利用している中で侵入域では攪乱環境に出現しているのか、それとも原産域を含めて攪乱環境を好んでいるのかの理解は進んでいない。また外来種が侵入域と原産域で利用する環境ニッチはどの程度在来種と重なるのかの知見も限られている。そこで本研究では、外来アリに着目し、在来種と外来種それぞれの種が原産地域と侵入地域で利用するニッチ幅を主成分分析によって推定し比較を行った。そして、侵入域の外来種と重なる気候ニッチと土地利用ニッチニッチをもつ在来種を「潜在的被影響種」とし、また外来種が原産域でもつニッチと重なる気候ニッチや土地利用ニッチをもつ在来種を「潜在的外来種」として評価を行った。本研究の結果から、外来種と在来種の気候ニッチと土地利用ニッチの重複を評価することは、種間競争や生態系への影響を評価する上で重要な指標となりえることが明らかになった。また、潜在的外来種の特定により、将来の侵入種対策における予防的なアプローチを可能とすることが示唆される。本研究は外来種と在来種が利用する環境ニッチを気候と土地利用の観点から理解を深めることにより、外来種発生メカニズムの解明と多様性保全戦略の向上に寄与すると考えられる。