日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PG01] ポスター発表(一般A:コアタイム2)

2024年3月29日(金) 12:30 〜 13:30 桜(一般) (桜)

[PG01-36] モモシンクイガの後休眠発育特性

◯石栗 陽一1 (1. 青森産技りんご研)

休眠は発育や繁殖に不適な環境を耐えるだけでなく、種ごとに決まったステージで発育を停止することにより発育のばらつきを解消する生態的意義がある。モモシンクイガは老熟幼虫が土繭(冬繭)の中で休眠し、越冬後に新たに作り替えた土繭(夏繭)の中で蛹化した後、成虫が羽化する。越冬世代成虫は5月下旬から羽化し始めるが、羽化時期には個体間で大きなばらつきが見られ、6月下旬~7月上旬を盛期として7月中下旬まで約2ヶ月にわたって羽化が続く。本種の休眠後の発育がばらつく要因を明らかにするため、越冬後の冬繭を14~26℃の5段階の温度に加温し、冬繭からの幼虫の脱出とその後の成虫羽化までに要する日数を調査した。その結果、冬繭からの幼虫脱出時期は14℃や17℃など比較的低温下で80~90日にわたる個体間のばらつきが見られただけでなく、発育適温と思われる20℃以上の温度でも60日前後のばらつきが認められた。一方、冬繭を脱出した幼虫が夏繭で蛹化して羽化するまでの日数は、いずれの温度でも個体間のばらつきが10~20日と小さかった。越冬世代成虫の羽化時期に見られる個体間のばらつきは主に冬繭からの脱出時期の個体間の違いによって生じていると考えられた。