日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PS01] ポスター発表(学生A:コアタイム1)

2024年3月29日(金) 11:30 〜 12:30 桜(学生) (桜)

[PS01-43] 捕食寄生性線虫シヘンチュウにおける高次寄生

◯藤森 友太1、新屋 良治1、神崎 菜摘2 (1. 明治大学農学研究科 植物線虫学研究室、2. 森林総合研究所 関西支所)

シヘンチュウは幅広い昆虫を宿主とする捕食寄生性の線虫である。線虫としては非常に大型であるものの、一般に寄生率が低いこと、絶対寄生性で培養が困難であることから生態的な知見に乏しい。演者らは北海道喜茂別町の貯木場において採集したコンボウケンヒメバチから2頭のシヘンチュウを得た。コンボウケンヒメバチはヒゲナガカミキリの捕食寄生者とされ、得られたシヘンチュウは本来ヒゲナガカミキリに寄生する種であると考えられる。線虫における高次寄生は主に寄生蜂で報告されているものの数少なく、特に捕食寄生性の線虫では初めての例である。また線虫の高次寄生は必ずしも成功するとは限らず、一次寄生者の寄生蜂への侵入には成功しても成育に失敗する例が知られている。本調査で得たシヘンチュウは3期幼虫まで成育が進んでおり、一次寄生者を利用した成育が可能であることを示唆した。シヘンチュウの宿主への感染経路は主に経皮感染、卵の経口感染が知られており、単純な一次寄生性の捕食寄生者とされてきた。しかし本調査における観察例は、侵入した宿主体内に別の寄生者が先行して寄生していた場合、条件的に高次寄生を行うことで宿主を切り換えて成育する可能性を示唆した。