日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PS01] ポスター発表(学生A:コアタイム2)

2024年3月29日(金) 12:30 〜 13:30 桜(学生) (桜)

[PS01-48] キイカブリダニ母親の日齢が卵の保護行動に与える影響

◯新開 翼1、長 泰行1 (1. 千葉大・応用昆虫)

親による子孫の世話は、子孫の生存率を向上させる行動である一方、親自身はエネルギーや時間の消費、捕食者に襲われやすくなるといったコストを負う。そのため、親は子孫の世話をすることで、将来の繁殖に負の影響を受ける。このような状況では、死ぬまでに繁殖の機会が何度もある若い親と、繁殖の機会が限られている高齢の親では、子孫の世話の価値が異なる可能性がある。この可能性を検証するため、子孫の世話としてミヤコカブリダニ(以下ミヤコ)に対して卵を保護する行動が知られているキイカブリダニ(以下キイ)を用い、キイ母親による卵の保護に母親の日齢が与える影響を調べた。若いキイ母親と一緒にいた卵の生存率はミヤコの存在によって低下せず、卵を保護することが確認された。一方、老いた母親と一緒にいた卵の生存率は、ミヤコの存在によって低下したことから、卵を保護しないと考えられた。また、若いキイ母親と一緒にいた卵の生存率は老いたキイ母親と一緒にいたそれよりも高かった。これらの結果から、キイ母親による卵の保護行動は加齢に伴って変化した、と考えられる。これらの結果に加えて、産卵場所におけるキイ母親の滞在時間を調べた実験結果と合わせて、キイ母親の日齢に応じた卵の保護の適応的意義について考察する。