日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PS02] ポスター発表(学生B:コアタイム2)

2024年3月30日(土) 12:30 〜 13:30 桜(学生) (桜)

[PS02-10] アゲハチョウの産卵管に高発現するOdorant binding protein(OBP)の解析

◯廣嵜 由利恵1,2、宇賀神 篤2、尾﨑 克久2、二河 成男1 (1. 放送大院・自然環境、2. JT生命誌研究館)

鱗翅目昆虫のメス成虫は幼虫の餌となる特定の植物に選択的に産卵する。その識別には前肢に多数存在する味覚感覚子が重要であることが知られており、植物由来の化学物質受容に関わる分子についても明らかとなりつつある。1980年代に実施された解剖学的研究から、産卵管にも味覚感覚子が分布することが知られているが、その役割や分子機構についてはほとんど明らかとなっていない。
 ナミアゲハ(Papilio xuthus)の産卵管の辺縁部には約20本の味覚感覚子様の突起物が限局する。行動実験では、前肢さえ食草に触れれば産卵管が食草/非食草いずれに触れても産卵した。すなわち、産卵管における化学感覚は前肢のような「食草か否か」の識別とは異なる役割を果たすものと考えられる。遺伝子発現解析からは、化学物質と受容体との相互作用を補助する役割を担うOBP遺伝子のうち1つが産卵管の味覚感覚子に顕著に高発現することが明らかとなった。さらに、この遺伝子は交尾経験依存の発現上昇を示した。同定したOBPが産卵管特有の化学感覚に中心的な役割を担う可能性が考えられる。