日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PS02] ポスター発表(学生B:コアタイム1)

2024年3月30日(土) 11:30 〜 12:30 桜(学生) (桜)

[PS02-89] 水田ビオトープにおけるアメリカザリガニの低密度化が水生昆虫に与える影響

◯松村 拓樹1、岸本 圭子2 (1. 新潟大院、2. 龍谷大・先端理工)

アメリカザリガニは北米原産の外来種で、直接的・間接的な相互作用を通じて池沼や湿地の生態系に甚大な影響を及ぼしており、在来生物への悪影響が生じている地域では迅速かつ効率的な駆除が必要とされている。アメリカザリガニを駆除したことによる在来生態系の回復事例はいくつか知られており、各地で水生昆虫や水生植物の種数・個体数の劇的回復が報告されている。しかし駆除による水生昆虫相の回復過程を、駆除しない場合と比較し検証した事例はほとんどない。そこで本研究では棚田跡地に造成された水田ビオトープにおいてビオトープ内の一部を畦波シートで囲い、定期的にアメリカザリガニの駆除を行う駆除区と対照区を設けて野外操作実験を実施し、両実験区の水生昆虫相の回復過程を観察した。その結果、駆除区では8月以降特にトンボ目の種数・個体数の増加が認められた。また、抽水植物被度や水質等の環境要因とアメリカザリガニの駆除を説明変数として両実験区の水生昆虫の種数・個体数に与える影響をGLMMで解析した結果、駆除がコウチュウ目・カメムシ目・トンボ目の種数・個体数に有意に正の影響を及ぼすことが示された。これらのことから、アメリカザリガニの駆除によって、物理環境や抽水植物被度が十分に回復しなくても水生昆虫が回復することが示唆された。