第59回日本小児神経学会学術集会

セッション情報

実践教育セミナー

在宅医療

[JKS2] 実践教育セミナー2
小児在宅医療実技講習会~小児在宅医療に必要な手技~

2017年6月14日(水) 12:00 〜 18:30 第5会場 (10F 会議室1008)

【ねらい】
新生児医学の発展により,今まで生存不可能とされてきた超低出生体重児や分娩障害による重篤な脳障害,ないし多発奇形児が生存可能となったが,その後のNICUにおける長期入院が新たな入院受け入れを不可能にする要因にもなった.これら長期入院児が自宅に移行できるようにするためには,小児の在宅医療に精通した医師の存在は欠かせない.しかし,これまでの医学教育,または卒後の研修プログラムや専門医に進んでから獲得した医療技術のほとんどは臓器医療などのCureに偏重しており,その結果として患者に残った後遺症や身体・精神の機能不全をいかに維持し,Careしていくかの教育は行われていない.そのため,多くのNICUやPICUにおいて,これら長期入院児を退院させていくにあたって,自宅で必要な栄養管理や呼吸管理をどのようにすれば良いのか戸惑うことが多々見られる.一方,地域において,プライマリーケアを行っている一般小児科医においても無論,これらの実技を習得しておらず,たとえこのような医療的ケアを必要とする児が地域に戻ってきた場合,定期的に訪問診療をすることができず,また訪問看護ステーションに対して指示を出すこともできない.実技内容は,医療的ケアの中でもニーズが最も高い在宅酸素,胃瘻,気管カニューレ,さらに人工呼吸器の取り扱いに絞り,それぞれについて,講義のすぐ後に実習を繰り返すことで,受講者に頭と体で覚えてもらうこととした.さらに,在宅医療機器の展示も行い,在宅における機器の交換,配達,管理を医師に理解してもらう目的で,それぞれの機器を前に,機器の特性について業者に説明してもらうこととした.さらに,小児脳性麻痺患者における痙縮などについてはA型ボツリヌス毒素が有効であり,また外来でも治療可能であることから,今回の実技講習会においても講義することにした.短い実技講習では,十分に学習できた段階に到達できるわけではないが,「小児在宅医療」に対する苦手意識,ないしハードルの高さを少しでも低くして,各医師が身近にある症例に少しでも実際に接し,経験していくことによってより多くの知識と実技を獲得していくことを願っている.

江原伯陽1, 廣瀬正幸2, 和田浩3, 塩川智司4, 竹本潔5, 齋藤健6, 大植慎也7 (エバラこどもクリニック1, 大阪府立母子保健総合医療センター新生児科2, 大阪発達総合療育センター訪問診療科3, 四天王寺和らぎ苑4, 大阪発達総合療育センター小児科5, 産業医科大学医学部脳神経外科6, おおうえこどもクリニック7)