第60回日本小児神経学会学術集会

セッション情報

シンポジウム

[SY1] シンポジウム1
急性脳症の最新知見

2018年5月31日(木) 10:10 〜 12:10 第1会場 (コンベンションホールB)

座長:髙梨潤一(東京女子医科大学八千代医療センター小児科)、水口雅(東京大学大学院医学系研究科発達医科学)

【企画・趣旨のねらい】
 我が国の小児に好発する小児急性脳症の診断・病態解明・治療研究は,本学会員の尽力により格段の進歩を遂げています.本シンポジウムは急性脳症研究の現時点での到達点と未解明な部分を示し,今後の診療・研究に結びつけることを目的として企画しました.
 我が国の小児急性脳症の疫学調査は「重症・難治性急性脳症の病院解明と診療確立に向けた研究班」(水口班)により2010年に施行されました.罹病率は400~700人/年と推定され,症候群分類ではAESD(29%),MERS(16%),ANE(4%)の順と報告されています.その後,ロタウイルスワクチンの導入,突発性発疹の高年齢化などを踏まえ,2017年に疫学再調査が施行されました.その結果を含めて急性脳症をoverview(水口雅先生)いたします.
 2016年には本学会から「小児急性脳症診療ガイドライン」が発行されました.本GLは小児急性脳症全般を対象とし,臨床経過・予後の異なる病態毎に診断・治療(ステロイドパルス療法の推奨度)が記載されています.本GLについて概説(奥村彰久先生)いたします.
 現在の急性脳症診療で,残された最大の課題はAESDと思われます.脳症症候群のいずれにも分類されない「分類不能」のうち軽症症例の一部は,二相性経過を示さず,MRI画像でBTA含め異常を認めないが,MR spectroscopyで一過性のグルタミン上昇を認めます.この一群はClinically mild encephalopathy associated with excitotoxicity[MEEX]として報告され,AESDとMEEXを加えると興奮毒性型が約60%と想定されます.興奮毒性型スペクトラムの拡がりについて概説(髙梨)いたします.
 ついで,臨床的に熱性けいれん重積との鑑別が困難であり,いまだ最適な治療法が確立していないAESDの早期診断・治療戦略の最新知見(山内秀雄先生)について企画しました.我が国の小児に好発する急性脳症には何らかの遺伝素因が関与していると考えられます.多くの脳症症例の解析から最新情報をお届けします(星野愛先生).最後に,AERRPSを中心に脳症と神経炎症についての知見(佐久間啓先生)を企画いたしました.
 聞きたい演題をリクエストした結果,6演題構成となりました.短い時間の中にエッセンスが詰まっていると確信しています.

佐久間啓1、多田弘子1、2、鈴木智典1、3、長谷川節子1、3、松岡貴子1、4 (公益財団法人東京都医学総合研究所脳発達・神経再生研究分野1、千葉県済生会習志野病院小児科2、東京医科歯科大学発生発達病態学分野3、国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部4)