第33回大阪府理学療法学術大会

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Web Poster

[P-8] P-8

Sun. Jul 11, 2021 8:45 AM - 3:30 PM Web Poster:P-8 (webポスター会場)

座長:法所 遼汰(牧整形外科病院)

[P-8-02] 左小脳出血を既往にもつ左人工股関節全置換術後に四点杖歩行が自立に至った一症例

*河邉 直哉1、津本 和寿2 (1. 永山病院、2. ライフケアながやま)

【緒言】

左人工股関節全置換術(以下THA)後、四点杖歩行時に安全性・安定性低下を認めた症例に対し、既往歴である左小脳出血の影響を考えた理学療法を施行した結果、改善を認めた為報告する。

【倫理的配慮、説明と同意】

 本人に発表の趣旨を説明し同意を得た。

【症例紹介】

80歳代女性。1年前より左股関節に疼痛が生じ、X年Y月Z日に関節リウマチと診断されZ+1日にTHAを施行した。術式は前側方アプローチであり、その際左大転子を切離、縫合しているため左股関節自動外転禁止であった。左股関節痛出現以前はトイレまで伝い歩き、和室・仏間は四点杖歩行、外出時は歩行車での移動であった。主訴は「歩けない」、Needは「四点杖歩行動作の安全性・安定性向上」、Hope「仏壇に行きたい」、既往歴に左小脳出血(約5年前)がある。

【評価とリーズニング Z+40日】

 四点杖歩行は、左LR~MStに左股関節内転・骨盤左側方移動が乏しく、左股関節外転位を伴い左TStへ移行する。左MSt~TStに骨盤右下制、体幹左傾斜し左股関節伸展は乏しい。

 検査測定よりROM(右°/左°):股関節伸展10/0、内転20/0、MMT(右/左):股関節伸展4/2、外転5/2。片脚立位(右/左):13.7/不可 秒。10m歩行:51.3秒/46歩。鼻指鼻試験・踵膝試験・向こう脛叩打試験(右/左):陰性/陽性。SARA:19/40。

 四点杖歩行の安全性・安定性低下は、左LR~MStに左股関節内転・骨盤左側方移動・左下肢への荷重が乏しいと考えた。要因は左中殿筋、大殿筋の筋力低下より、左股関節内転を制動できず、骨盤左側方移動が困難と考えた。本人より「1年間足を引きずるように歩いていた」と聴取し、左MSt~TStにて左股関節外転位を伴った歩行動作の学習が予想され、左下肢への荷重が乏しい要因の一つと考えた。また、小脳失調検査陽性であり動作の習熟に時間を要することから、フィードフォワードコントロールの低下を考えた。辻らは小脳出血に対する理学療法では「速い明確な区切りにある運動は小脳障害の影響を受けやすいのに対し、連続的な繰り返し運動は影響を受けにくい」という報告があり、本症例も歩行改善を目的とした反復動作練習を導入した。

【介入と結果 Z+66日】

理学療法は股関節可動域練習、左大殿筋・中殿筋筋力増強練習、ステップ練習、片脚立位、歩行練習を実施した。四点杖歩行にて、左LR~MStに左股関節内転・骨盤左側方移動が増大し、体幹右傾斜は軽減した。ROM(右°/左°):股関節伸展10/10、内転20/15、MMT:(右/左)股関節伸展5/4、外転5/2+。片脚立位(右/左):18.9/1.7秒。10m歩行:34.1秒/30歩。小脳失調検査・SARAは変化を認めなかった。

【結論】

本症例は左中殿筋・大殿筋の筋力低下により四点杖歩行の安全性・安定性低下を認めた症例であった。手術による左大転子転位のリスクを考慮した筋力増強練習、既往の小脳出血の影響を考慮した理学療法を実施した結果、左中殿筋・大殿筋筋力向上に加え歩行動作の学習により四点杖歩行の自立に至ったと考える。

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