[PR-18-04] 緊張性振動反射による拮抗筋筋緊張抑制効果の経時的変化について −H/M比を用いた検討−
【背景と目的】
関節可動域制限は臨床症例における最も重要な問題点の1つであり、その原因となる関節周囲筋の筋緊張亢進に対する治療法として、振動刺激の有効性が知られている(沖田、2008)。100Hz程度の振動刺激では緊張性振動反射が誘発され、拮抗筋の筋緊張が抑制される(Hagbarth、1966)。しかし、緊張性振動反射による筋緊張抑制効果の経時的変化を示した報告は少ない。そこで本研究は脊髄運動細胞の興奮性(振幅H/M比)を指標として、振動刺激による拮抗筋筋緊張抑制効果の経時的変化を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は下肢に神経障害の既往がない健常青年16名(年齢24±2.4歳)とし、被験部位は左下肢とした。振動刺激はベッド上腹臥位(膝関節屈曲30度、足関節底屈20度位)で左下腿遠位部の前脛骨筋腱部前面に5分間実施した。測定肢位はすべての被検者で統一した。振動刺激にはハンディマッサージャー MD-013(大東電気工業製)を用いて100Hzにて刺激した。緊張の評価には誘発筋電図を用いてH波振幅及びM波の最大振幅を測定し、振幅比(H/M)を算出した。刺激条件は左膝窩部の脛骨神経走行部位を周波数0.5Hz、刺激持続時間1ms、刺激強度をM波記録は最大上刺激、H波記録はM波出現閾値の1.2倍強度とした。記録条件は探査電極をヒラメ筋筋腹、基準電極をアキレス健内側、接地電極を探査電極と基準電極の中間点とした。波形の測定は、M波の最大振幅を記録し5分間の安静臥床の後にH波を記録し、その後振動刺激開始30秒、1、2、3、4、5分後にもH波を記録した。解析は一元配置分散分析をおこない、有意差を確認後、Bonferroni法による多重比較検定をおこなった。
【結果】
安静時と比較して、振動後全ての測定において振幅H/M比が有意に低値であった(p<0.01)。振幅H/M比は振動開始後30秒で安静時の約50%まで低下し、その後有意な変化は認めなかった。
【結論】
本研究では振動刺激の効果判定を誘発筋電図で測定されるH/M比を用いておこなった。H波は脊髄前角細胞の興奮性を示し、筋緊張の指標となるといわれている。振動刺激の効果判定をH波振幅のみでおこなっている先行研究があるが、H波振幅は健常者でも値が様々であるため、H波振幅よりも振幅H/M比が広く使われている。今回前脛骨筋腱への振動刺激により30秒後からヒラメ筋H/M比が有意に低下した。その後5分間はH/Mに有意な変化は認めなかった。この結果より、臨床において振動刺激によるヒラメ筋の筋緊張の抑制効果を狙う場合は前脛骨筋腱に対して30秒の刺激で効果が認められることが示唆された。今回の測定結果が、他の筋でも同様となるかは今後の検証が必要である。
【倫理的配慮、説明と同意】
すべての被験者に対して、ヘルシンキ宣言に基づいて口頭および書面にて説明を行い、同意および承諾を得た。
関節可動域制限は臨床症例における最も重要な問題点の1つであり、その原因となる関節周囲筋の筋緊張亢進に対する治療法として、振動刺激の有効性が知られている(沖田、2008)。100Hz程度の振動刺激では緊張性振動反射が誘発され、拮抗筋の筋緊張が抑制される(Hagbarth、1966)。しかし、緊張性振動反射による筋緊張抑制効果の経時的変化を示した報告は少ない。そこで本研究は脊髄運動細胞の興奮性(振幅H/M比)を指標として、振動刺激による拮抗筋筋緊張抑制効果の経時的変化を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は下肢に神経障害の既往がない健常青年16名(年齢24±2.4歳)とし、被験部位は左下肢とした。振動刺激はベッド上腹臥位(膝関節屈曲30度、足関節底屈20度位)で左下腿遠位部の前脛骨筋腱部前面に5分間実施した。測定肢位はすべての被検者で統一した。振動刺激にはハンディマッサージャー MD-013(大東電気工業製)を用いて100Hzにて刺激した。緊張の評価には誘発筋電図を用いてH波振幅及びM波の最大振幅を測定し、振幅比(H/M)を算出した。刺激条件は左膝窩部の脛骨神経走行部位を周波数0.5Hz、刺激持続時間1ms、刺激強度をM波記録は最大上刺激、H波記録はM波出現閾値の1.2倍強度とした。記録条件は探査電極をヒラメ筋筋腹、基準電極をアキレス健内側、接地電極を探査電極と基準電極の中間点とした。波形の測定は、M波の最大振幅を記録し5分間の安静臥床の後にH波を記録し、その後振動刺激開始30秒、1、2、3、4、5分後にもH波を記録した。解析は一元配置分散分析をおこない、有意差を確認後、Bonferroni法による多重比較検定をおこなった。
【結果】
安静時と比較して、振動後全ての測定において振幅H/M比が有意に低値であった(p<0.01)。振幅H/M比は振動開始後30秒で安静時の約50%まで低下し、その後有意な変化は認めなかった。
【結論】
本研究では振動刺激の効果判定を誘発筋電図で測定されるH/M比を用いておこなった。H波は脊髄前角細胞の興奮性を示し、筋緊張の指標となるといわれている。振動刺激の効果判定をH波振幅のみでおこなっている先行研究があるが、H波振幅は健常者でも値が様々であるため、H波振幅よりも振幅H/M比が広く使われている。今回前脛骨筋腱への振動刺激により30秒後からヒラメ筋H/M比が有意に低下した。その後5分間はH/Mに有意な変化は認めなかった。この結果より、臨床において振動刺激によるヒラメ筋の筋緊張の抑制効果を狙う場合は前脛骨筋腱に対して30秒の刺激で効果が認められることが示唆された。今回の測定結果が、他の筋でも同様となるかは今後の検証が必要である。
【倫理的配慮、説明と同意】
すべての被験者に対して、ヘルシンキ宣言に基づいて口頭および書面にて説明を行い、同意および承諾を得た。
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