第34回大阪府理学療法学術大会

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[EL-1] 教育講演
老年期理学療法のエビデンス

Sun. Jul 3, 2022 12:35 PM - 2:05 PM 会場1(LIVE ch1) (10階 1003会議室)

座長:三谷保弘(関西福祉科学大学)

12:35 PM - 2:05 PM

[EL-1] 老年期理学療法のエビデンス

永井 宏達 (兵庫医科大学リハビリテーション学部 准教授)

2021 年時点における本邦の高齢者人口は 3640 万人、高齢化率は 29.1%となっている。そして、2022 年は団塊の世代が 75 歳以上となり始める年であり、後期高齢者で顕著となる老年症候群を始めとしたフレイルの急増、それに伴う要介護者の増加が今後見込まれる。その意味で、2022 年は超高齢社会の次のステージに突入する重要な年であるともいえる。
ひと括りに老年期(高齢者)といえども、高齢者の背景は非常に多様であり、また、理学療法士が関わるフィールドも多岐に渡っていることを踏まえると、エビデンスを一律に適応できないことのほうが多いと思われる。それでも、老年期における理学療法介入のエビデンスを把握しておくことは、理学療法を実施していく上で有用な道標となると思われる。
一方で、ことエビデンスの話となると、身体機能や、障害の発生リスク等をアウトカムにしたものが中心となってしまうことが多いように感じる。そのため、エビデンスを重視しすぎると、本来の理学療法やリハビリテーションの目的がいつの間にか見えづらくなってしまいかねない印象を持っている。エビデンスは重要である一方で、多様性を有する高齢者に対しては、「たかがエビデンスでしかない」という認識も忘れずに持っておきたい。その対象者が何を望み、どんな生活を送りたい
と考えているかを正しく把握することが重要であり、エビデンスに基づく理学療法はそれらを支援する手段に過ぎない。
病院や施設・在宅などで理学療法士が定期的に介入できる環境であれば、エビデンスに即した介入量をある程度確保することが求められる(適応可能な場合)。一方で、必ずしも継続的、もしくは長期的に理学療法士の介入が実施できるとは限らず、理学療法士による管理から外れた途端にエビデンスに基づく支援が困難となるケースも多い。理学療法士の管理下におけるエビデンスの正しい活用と、管理外になった場面での、エビデンスに沿った好ましい生活行動習慣の継続を支援する視点も重要になっていると感じている。
本教育講演では、上記の課題を踏まえつつ、老年期理学療法で押さえておきたいフレイル・サルコペニア対策、転倒予防等を中心に、基本的な情報から最新の知見まで紹介する。本講演が老年期理学療法のエビデンスを活用するきっかけになれば幸いである。