第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

口述 一般演題

事前公開

[O-02] 一般演題(運動器②)

2022年7月3日(日) 12:35 〜 13:20 会場4 (10階 1009会議室)

座長:都留 貴志(市立吹田市民病院)

12:55 〜 13:05

[O-02-3] 右TKA後に膝蓋腱断裂を生じた両側膝OAの1例~膝蓋骨のマルアライメントに着目して~

久松 寛, 服部 玄徳, 野村 日呂美 (医療法人 徳洲会 八尾徳洲会総合病院リハビリテーション科)

キーワード:膝蓋腱断裂、膝蓋骨高位

【症例紹介】
 TKA後の膝蓋腱断裂の発生頻度は0.17~2.5%であり,理学療法の介入報告は少ない。今回TKA術後の膝蓋腱断裂に対して人工靭帯による再建術を行った1例を経験したため,リハビリテーションの一助とすることを目的として報告する。
 本症例は両膝OA(K-L分類Ⅳ)を有し,右TKA後膝蓋腱断裂を呈した80歳台の女性である。現病歴はTKA施行2ヶ月後より徐々に右膝痛が出現し,歩行困難となり当院受診となった。既往歴に慢性腎臓病(透析導入期)を有していた。病前ADLは全自立(押し車使用)であった。
【評価とリーズニング】
 術前画像所見ではInsall-Salvati比(IS比):1.88で,膝蓋骨高位を認めた。人工靭帯による再建術を施行し,医師の指示にて安静度は術後42日目まではニーブレースを装着し膝屈曲30°までとした。術後画像所見はIS比:1.52,Patella lateral tilt angle(Plta):18°で,膝蓋骨のマルアライメントを認めた。人工靭帯への過負荷に注意し,膝蓋骨マルアライメントの原因と考えられる膝外側支持組織に着目してプログラムを立案した。
 介入期間は入院中の術後1日目から27日目および退院後の外来(週1回)にて70日目までであった。術後43日目からは,膝蓋腱にかかる運動負荷量を細かく段階的に漸増させるようプログラムを修正した。
【介入と結果】
 術後1日目より標準的理学療法(物理療法・運動療法・基本動作練習)を実施し,揃え型歩行となるよう動作指導を行った。
 術後43日目では,動作時痛(NRS:2),膝外側筋群(外側広筋,大腿筋膜張筋)を中心とした筋緊張の亢進,圧痛,伸長痛を認めた。股関節内転可動域は5°,Oberテスト陽性,自動伸展不全10°を認めた。膝伸展筋力(kgf/kg)0.18,歩行速度(m/秒)0.81,膝JOAスコア55点であった。上記から,膝外側筋群,膝蓋支帯など膝蓋骨周囲組織の柔軟性獲得を目的としたストレッチを実施し,筋力トレーニングは膝伸展位での等尺性収縮運動から段階的に等張性収縮運動へと移行し,正常歩行へ近づくよう歩行練習を行った。
 術後70日目では,膝痛なく,膝屈曲105°/伸展0°可能で,自動伸展不全は0°に改善した。Pltaは12°で膝蓋骨マルアライメントは改善し,股関節内転可動域は15°まで拡大した。膝伸展筋力0.26,歩行速度1.25,膝JOAスコア80点となり,押し車歩行の再獲得に至った。
【結論】
 TKA後の膝蓋腱断裂にて再建術を行った1例に対し,膝蓋骨のマルアライメントに着目して介入を行ったところ,疼痛・可動域・筋力が改善し歩行能力の再獲得に至った。
【倫理的配慮、説明と同意】
 本症例はヘルシンキ宣言に則り、対象者には十分な説明を行い、同意を得た。