第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

ポスター 一般演題

事前公開

[P-03] ポスター演題③

2022年7月3日(日) 15:15 〜 16:15 会場8 (12階 12Fホワイエ)

座長:永井 佑典(大阪府済生会千里病院)

15:51 〜 16:03

[P-03-4] 長期にわたる低栄養と全身性浮腫により離床に難渋した化膿性脊椎炎の一症例 -回復期リハビリテーション病棟でのADL獲得に向けた多職種連携-

三井 健太郎1, 高橋 孝多1, 和田 明1, 吉岡 美香1, 山本 清貴1, 関 しづか2, 藤田 知叡3, 吉本 麻美4 (1.交野病院リハビリテーション科, 2.交野病院薬剤科, 3.交野病院栄養科, 4.交野病院看護部)

キーワード:低栄養、全身性浮腫

【症例紹介】
79歳男性 合併症に膵嚢胞性腫瘤、糖尿病。Z-35日 腰部脊柱管狭窄症に対してL3/4/5後方脊椎固定術を施行後自宅退院。Z日 発熱で入院、腰椎化膿性脊椎炎と診断。抗菌薬治療とデブリ―ドマンを施行。Z+44日 離床開始するが、全身性浮腫と下肢筋力低下により離床に難渋。Z+150日 回復期リハビリテーション病棟入棟。
【評価とリーズニング】
Z+150日 入棟時、体重53kgで体幹・両下肢に全身性浮腫を認めた。MMTは股関節周囲1/1、膝関節伸展1/1、足関節背屈2/1、ADLは移乗・排泄動作全介助、歩行困難であった。食事は経口で10割摂取していたが、血液データはTP:4.4g/dL、ALB:2.3g/dLであった。長期にわたる低栄養と全身性浮腫はリハビリテーション阻害因子であり、多職種で現状や治療方針を共有してチームで関わることが重要と考えた。
【介入と結果】
Z+153日 リハビリテーション目標は車椅子移乗動作獲得とし、理学療法は移乗ボードを用いた車椅子移乗練習と平行棒内立位・歩行練習を実施した。薬剤師はSGLT-2阻害薬の中止と利尿剤投与を提案、栄養士は29kcal/kgIBW/日の食事を提供した。Z+173日 理学療法士から看護師へ車椅子移乗動作方法の伝達を行った。看護師はADLで車椅子移乗を開始し、離床機会拡大を図った。リハビリテーション目標を排泄動作獲得に変更し、理学療法はトイレ移乗練習と歩行器歩行練習へ移行した。薬剤師は低K血症を認めたため利尿剤変更と消化酵素補充目的に消化酵素製剤投与を提案、栄養士は27kcal/kgIBW/日の食事を提供した。Z+201日 作業療法士から看護師へ排泄動作方法の伝達を行い、ADLではトイレでの排泄動作を開始した。リハビリテーション目標を歩行獲得に変更し、理学療法は手すりと杖を使用した歩行練習へ移行した。Z+223日 退院時、体重41.6kgで全身性浮腫は軽減した。MMTは股関節周囲2/2、膝関節伸展3/3、足関節背屈3/2、ADLは移乗・排泄動作修正自立、歩行は理学療法で手すりと杖を用いて行った。食事は経口で10割摂取、血液データはTP:6.2g/dL、ALB:3.8g/dLであった。
【結論】
膵性糖尿病は膵外分泌不全による消化吸収阻害とインスリン不足で低栄養を呈すると言われている。本症例は併存する膵嚢胞性腫瘤による低栄養に加えて、化膿性脊椎炎の炎症や手術侵襲による低栄養悪化も示唆された。浮腫は全身性と局所性に大別され、全身性には腎性、肝性、心性、栄養障害性などがある。本症例は低栄養を伴う全身性浮腫であり、栄養障害性浮腫と考えた。これらに対して利尿剤・消化酵素製剤投与と適切な栄養管理を行ったことで、低栄養と全身性浮腫が改善したと考えた。このように低栄養と全身性浮腫の改善に合わせて移乗・排泄動作から歩行へと段階的にリハビリテーション目標・理学療法内容を変更でき、獲得した動作をADLに般化することもできた。
多職種で現状や治療方針を共有してチームで関わることが重要な症例であった。