第16回日本薬局学会学術総会

講演情報

共催シンポジウム

共催シンポジウム2
「薬局薬剤師による食事・栄養への関わり方のガイダンス」

2022年11月6日(日) 13:10 〜 14:40 第2会場 (5階 国際会議室501)

座長:望月 眞弓 (慶應義塾大学 名誉教授), 富永 佳子 (新潟薬科大学薬学部 教授)

共催:日本臨床栄養協会の薬局・薬剤師活動委員会

[CSY2-1] 薬局薬剤師による食事・栄養への関わり方のガイダンス-糖尿病患者への対応-

富永 佳子 (新潟薬科大学薬学部 教授)

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 近年、管理栄養士を採用する保険薬局も徐々に増えているが、全体からみるとまだまだ少ない。薬剤師は管理栄養士のように栄養学、食品学、調理学を体系立てて学修できるわけでなく、管理栄養士が患者の個別指導の場で発揮しているような“ カウンセリングスキル” を習得することも容易ではない。このような状況の中で、患者の生活背景を把握し、個々の状況にあわせた対応が求められている薬局薬剤師は食事栄養面への積極的な関わりも重要となってくる。『薬局薬剤師による食事・栄養への関わり方のガイダンス』は、薬局薬剤師が食事栄養領域に一歩踏み出そうと考えた時の初歩的な手引きになることを目指し、日本臨床栄養協会に設置された「薬局・薬剤師活動委員会」メンバーが病態もしくは場面別に実践的な手順をまとめたものである。
 糖尿病治療については、作用機序別の分類として経口薬・注射薬で計9種類が現在臨床使用され、配合剤も数多く使用可能な状況となっており、この20年ほどで血糖管理状況は徐々に改善してきている。しかし、未だ血糖の管理目標値を達成できていない患者は4割~ 5割程度存在するとの報告がある1)。透析導入患者の約4 割が糖尿病性腎症であり2)、糖尿病の重症化予防は重要課題の一つである。薬物治療を開始した後でも、継続して生活習慣の見直しを行なう必要があるが、そのような行動が実践できる患者ばかりではなく、「薬を飲んでいれば、食事は気にしなくてよい」と考える患者もいる。しかし、糖尿病患者のうち管理栄養士による指導を受ける機会があるのは約半数程度と限定的である1)。
 本ガイダンスの糖尿病患者への対応を述べたセクションでは、「糖尿病診療ガイドライン2019」(日本糖尿病学会編)にある食事栄養指導の指針に沿って、薬局薬剤師の立場でも対応可能と思われる内容に焦点をあてることとした。血糖上昇に大きく影響するような食習慣があるかどうかを効率的に把握することができるような質問例とともに、関わりの優先度や目標を判断することができるように活動のフローチャートを示した。主治医や管理栄養士らとの職種間連携における留意点にも触れている。
1) 富永ほか (2021). 2 型糖尿病患者における食事療法の理解度と体重・血糖管理に関係する諸要因の検討. 糖尿病 64(1):8-18.
2) 日本透析医学会. 2020 年末の慢性透析患者に関する集計.