第16回日本薬局学会学術総会

講演情報

ランチョンセミナー

ランチョンセミナー7

2022年11月6日(日) 12:00 〜 13:00 第3会場 (5階 502+503)

座長:宮野 雅也((株)タカラ薬局 取締役 店舗統括本部 人事部長)

共催:沢井製薬㈱

[LS7] トレーシングレポートを書こう

神村 英利 (福岡大学薬学部教授・福岡大学病院薬剤部長)

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 現在、医療機関のみで薬物療法が完結することはなく、薬局との連携が不可欠になっている。そして近年、薬局から医療機関に文書で情報提供することに調剤報酬が付くようになってきた。2022年度の調剤報酬改定においても、保険医療機関の求めに応じて、薬局が入院前の患者の同意を得て、服薬情報を一元管理し、必要ならば持参薬を整理して、保険医療機関に文書で情報提供し、これら一連の経過を薬剤服用歴に記録した場合に算定できる服薬情報等提供料3が新設されている。このような薬局から医療機関に提供される文書はトレーシングレポートが多い。
 福岡大学病院(以下、当院)では、FAX またはメールによりトレーシングレポートを薬剤部で受け付け、内容を確認した後、担当医に伝えている。また、外来でがん化学療法を施行中の患者のお薬手帳にレジメンの実施状況等を記載するとともに、使用頻度の高いレジメンについて副作用早見表や副作用チェック表等を載せたテレフォンフォローアップシートを交付して、薬局に持参していただいている。そして、テレフォンフォローアップシートを受け取った薬局は所定の時期に患者に電話をして服薬状況や副作用の発現状況を聞き取り、トレーシングレポートで当院に報告していただいている。これらの取り組みにより、当院が把握していない副作用が報告され、これに対応することで、患者のQuality of Lifeが向上した事例は枚挙に遑がない。このようにトレーシングレポートは薬局と医療機関が連携して薬物療法を行うための有用なツールである。
 トレーシングレポートは発信と受信の同時性を必要とせず、納得いくまで推敲して提出できるというメリットがある(萱野他、薬局67、2939 − 2944、2016)。一方で、時に疑義照会するべき内容のトレーシングレポートが送られてくることもある。そこで、本講演では、疑義照会する内容のものとトレーシングレポートでよいものを明らかにする。また、トレーシングレポートには報告・情報提供型と提案型があるので、それぞれの記載の仕方を解説する。さらには、医師が受け入れやすいトレーシングレポートと受け入れにくいものの違いについて説明する。そして、医師同士が交わす診療情報提供書の内容を示して、彼らが読み慣れている文脈について解説する。本講演がトレーシングレポートを書かれる際の参考になれば幸いである。