第17回日本薬局学会学術総会

講演情報

ランチョンセミナー

ランチョンセミナー2

2023年10月8日(日) 11:40 〜 12:40 第2会場 (3号館3階 国際会議室)

座長:松永 全弘(たんぽぽ薬局株式会社 薬局事業本部業務サポート部地域連携課 課長)

共催:日医工㈱

[LS2] 介護施設・在宅医療での薬の飲み方ガイド~錠剤粉砕を改めて考える~

倉田 なおみ (昭和大学薬学部 社会健康薬学講座 社会薬学部門 客員教授/臨床薬学講座 臨床栄養代謝学部門 客員教授)

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 介護現場で“飲めなければ錠剤は粉砕”が当たり前のようになっているが、徐放性製剤の粉砕による急激な血圧低下や呼吸状態悪化等が報告されている。薬剤師も、”錠剤粉砕”の指示があれば粉状にすることを念頭に調剤していないだろうか。
 2020年度厚労科研(長寿科学政策研究事業)の研究を行い、薬の適正使用、安全管理の観点から “錠剤粉砕”を含む調剤に関して新たな気付きがあったので、本セミナーで皆様と共有したい。
【介護施設利用者の服薬状況調査】
 介護施設利用者1993人の服薬状況率(水で服用、トロミやゼリーに混ぜる、オブラート使用、簡易懸濁法、食事に混ぜる)と錠剤粉砕の有無を調査した。服薬介助が必要で錠剤を粉砕している場合、“トロミやゼリー、食事に混ぜる“が83%であり、介助者が粉砕した錠剤を食事やとろみ水に混ぜて飲ませている。粉砕不可の錠剤が粉砕され、必要のない錠剤を潰している実態も明らかになった。施設での服薬状況を改善することは急務である。
【錠剤がつぶされる理由】
 食物は細かくして粘度を上げると嚥下しやすくなる。同様に考えて錠剤も粉砕される。食物は砕いても味は変わらないが、苦味がマスクされている錠剤を潰すと耐え難い味になる。この大きな相違点が介護の現場で理解されていない(薬剤師が伝えていない)ことが大きな問題である。
【嚥下機能低下時の服薬アルゴリズム】
 「嚥下機能低下に伴う服薬困難に対応するためアルゴリズム」を数種類作成した。薬の飲み方(水で飲む、食事に混ぜるなど)ごとの剤形選択、薬剤性嚥下障害を起こす医薬品一覧、錠剤が飲めない理由と原因毎の多職種連携パスなどである。報告書として出版した書籍「食事状況から導く、薬の飲み方ガイド」は、介護者に錠剤粉砕の問題点や粉砕しなくても適した剤形があることを知ってもらうツールであるが、薬剤師の活用も意識して編集した。
【薬剤師の役割】
 錠剤嚥下障害を評価する自記式アンケートを紹介する。介護が必要なら介護者に服薬状況を確認する。粉砕した薬で生じる味・においのリスクに目を向け、粉砕せずに服薬できるよう検討するのが薬剤師の役割である。確実に服薬させることを業務とする介護者は、飲めなければつぶしている。ならば、薬剤師は利用者の摂食嚥下機能や服薬状況も把握したうえで、介護者がつぶさないでも飲める薬を調剤するべきである。調剤においても、まさにモノからヒトである。