第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスター賞フラッシュトーク

[1FT-1] 構造生物学 (1P-01~1P-25)

2021年6月16日(水) 14:00 〜 14:30 チャンネル1

座長:山口 宏(関西学院大学)、禾 晃和(横浜市立大学)

[1P-08*] 新規レクチン様タンパク質の構造と機能の解析

影山 大夢1, 小野寺 かこ1, 松井 崇1,3, 小川 智久1,2, 横山 武司1, 田中 良和1 (1.東北大・生命, 2.東北大・農, 3.北里・理)

本研究では、熱帯地方の海綿抽出物中に見出された新規レクチン様タンパク質の構造と機能の解析に取り組んだ。糖結合カラムを用いた実験により、このレクチン様タンパク質がフコース、マンノースと結合することが確認できたため、これらの糖との複合体のX線結晶構造解析を行なった。明らかになった構造は二量体であり、二か所の糖結合部位を有していた。糖結合部位では、一方のプロトマーの4個のカルボキシル基と、もう一方のプロトマーのC末端カルボキシ基が水分子やCa2+イオンを介して糖と結合していた。C末端にグリシンを付加した変異体では糖結合活性を示さなかったことから、C末端カルボキシ基が適切な位置に配置されることが糖結合に重要であることが示された。さらに、等温滴定型熱量測定(ITC)および表面プラズモン共鳴(SPR)によりフコース、マンノースとの結合の詳細を評価したところ、フコースにはKD=4μM程度の強さで結合するものの、マンノースに対する結合はフコースに比べて著しく低いことがわかった。糖結合カラムを用いた実験やX線結晶構造解析では2つの糖鎖の結合に差異が確認されなかったのに対し、ITCやSPRによる精密相互作用解析では大きな違いが確認されたことは注目すべき点である。これらの結果は、高濃度の試料を用いて行う生化学実験や結晶構造解析で得られる結果が、必ずしも正しい分子特性を示さないことがあることを意味しており、構造解析と精密な物理化学的解析を並行して実施することの重要性が改めて示された。