第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[1P-1] ポスター1(1P-01ー1P-48)

2021年6月16日(水) 14:45 〜 16:45 ポスター会場1

[1P-07*] TGF-βシグナル主要転写因子SMAD2及びSMAD3のMH2ドメインにおける特性評価

楠林 和貴1, 宮園 健一1, 伊藤 友子1, 栗崎 晃2, 田之倉 優1 (1.東大・院・農生科, 2.奈良先端大・先端科学)

サイトカインの一種であるTGF-βの刺激は、細胞内で転写因子SMAD2及びSMAD3(SMAD2/3)のリン酸化へと変換される。SMAD2/3は、リン酸化依存的に別の転写因子SMAD4とヘテロ3量体を形成する。このヘテロ3量体は核内へ移行し、多種多様な転写因子や転写調節因子等(SMAD cofactor)との結合を通じて標的遺伝子の発現を制御する(TGF-β/SMAD経路)。SMAD2/3が持つ2つのドメインのうち、C末端側に保存されたMH2ドメインは、SMAD2とSMAD3の間で極めて高いアミノ酸配列同一性を持つ(97%)。そのため、MH2ドメインにおけるSMAD2とSMAD3の特性の差異に関しては、ほとんど解析されていない。一方、TGF-β/SMAD経路のネガティブフィードバック機構を担う分子であるTMEPAI (SMAD cofactor の1つ)は、SMAD2とSMAD3のMH2ドメインを識別できる可能性が示唆されている。そのため、SMAD2/3のMH2ドメインは異なる機能を有することが予想される。本研究では、SMAD2とSMAD3の間で、MH2ドメインに生物物理学的な性状の差異が確かに存在することを明らかにした。SMAD2/3のMH2ドメインにおける性状を、熱安定性解析、ゲルろ過解析、等温滴定カロリメトリー解析等によって評価したところ、SMAD2とSMAD3のMH2ドメインにおけるわずかな残基の違いは、SMAD cofactorやSMAD4との相互作用に影響を与えることを明らかにした。TGF-β/SMAD経路において、SMAD2/3はMH2ドメインのわずかな差異をも利用して、シグナル依存的な遺伝子発現を厳密に制御していることが示唆された。