第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[1P-1] ポスター1(1P-01ー1P-48)

2021年6月16日(水) 14:45 〜 16:45 ポスター会場1

[1P-40*] TGIF-1天然変性領域のリン酸化による機能制御機構の解析

中野 雄太1, 謝 祺琳2, 酒井 佑介2, 笠原 浩太2, 仙石 徹4, 肥後 順一3, 緒方 一博4, 高橋 卓也2 (1.立命館大・院・生命, 2.立命館大・生命, 3.兵庫県立大・院・シミュレーション, 4.横浜市立大・院・医)

TGIF1はTGF-βの活性化転写を抑制する多機能タンパク質である。TGIF1には天然変性領域(IDR)があり、そのリン酸化によってDNAとの結合が阻害されることが知られている。しかし、IDRの立体構造解析が困難であるため、その分子機構はわかっていない。本研究では、独自のシミュレーション手法であるVirtual system coupled canonical molecular dynamics (VcMD法) を用いてその分子機構を解明することを目的とした。構造既知のホメオドメイン(PBD ID:6FQP)近傍の3残基のリン酸化セリンを含む領域(残基番号280-300)はIDRであるが、この領域をペプチドとして配置した系について検討した。シミュレーション結果からIDRの安定構造を解析したところ、リン酸化セリンはDNA認識ヘリックス領域(219-221)のアルギニン残基に塩橋を形成した。そして、このリン酸化セリンの近くに3-10ヘリックス構造が形成されることがわかった。また、IDR上にリン酸化セリンと水素結合をする残基がいくつか存在した。これらの残基は、リン酸化セリンと相乗的に働き、DNA結合ドメインとの相互作用に寄与すると考えられる。また、DNA認識ヘリックス上のロイシンとペプチド上のロイシン2残基は疎水クラスターを形成していて、疎水性相互作用していると考えられる。これが、IDR相互作用の安定化にも関わっていると考えられる。研究では独自のシミュレーション手法を用いることにより、解析困難なIDRのメカニズムの解明に成功した。今後in vitro実験によって検証を行う予定である。