第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[1P-2] ポスター1(1P-49ー1P-87)

2021年6月16日(水) 14:45 〜 16:45 ポスター会場2

[1P-53*] 病原性大腸菌EPECが有するIII型分泌装置のATPase複合体の機能解析

鈴木 綾1, 上野 博史1, 黒崎 涼2, 内橋 貴之2, 野地 博行1 (1.東大・工・応化, 2.名大・理・物理)

食中毒などを引き起こすグラム陰性バクテリアは、3型分泌装置T3SS(Type Three Secretion System)というタンパク質輸送機関を用いて、感染対象の細胞内に有毒タンパク質を送り込み感染させる。特にT3SSの基部に存在するATPase complexは、ATPを加水分解することで輸送のエネルギー供給を行うとともに、感染に必要なタンパク質を選別していると考えられ重要視されている。このATPaseの触媒サブユニットは回転分子モーターF1-ATPaseの触媒サブユニットと近い配列をもち、サブユニットの単量体の構造も類似性が高いため、F1-ATPaseと同様に回転触媒機構を持つ可能性がある。病原性T3SSのATPase complexについては1分子回転観察の報告はされていないが、近年の研究において、病原性大腸菌EPECのT3SSのATPase complexの電顕構造が初めて得られ、触媒サブユニットEscNの6量体(EscN6)に軸状のタンパク質EscOが突き刺さっている構造が明らかになった。すでに回転運動機構が明らかにされているF1-ATPase, V1-ATPaseとの構造上の類似性が指摘されたこと、ヌクレオチドが結合した電顕構造からEscNの非対称な運動が示唆されたことなどから、この病原性T3SSのATPase複合体の回転触媒機構を解明する機運が高まっている。
そこで本研究では、病原性T3SSのATPase複合体がF1-ATPaseのような回転触媒機構を示すのかを検証するために、その機能(ATPase活性)解析、および高速AFMによるEscN6の直接観察による構造ダイナミクスの解析を行った。