第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[1P-2] ポスター1(1P-49ー1P-87)

2021年6月16日(水) 14:45 〜 16:45 ポスター会場2

[1P-57*] 脂肪酸結合タンパク質FABP3とFABP7の脂肪酸結合特性に関する比較研究

並木 葉月1, 徳留 俊1, 野村 舞2, 林 史夫3, 井上 裕介1,2,4, 杉山 成5, 松岡 茂6, 村田 道雄7, 園山 正史1,2,4,8 (1.群馬大・院理工, 2.群馬大・理工, 3.群馬大・機器分析セ, 4.群馬大・食健康セ, 5.高知大・理工, 6.大分大・院医, 7.阪大・院理, 8.群馬大・未来先端)

生体内で10種類のサブタイプが同定されている脂肪酸結合タンパク質(Fatty Acid-Binding Protein, FABP)は、細胞内において脂肪酸を輸送することで脂肪酸が担う様々な働きを制御していると考えられている。ヒトの脳細胞中において高発現しているFABP3とFABP7は脳機能発現や精神疾患に深く関与し、高いアミノ酸配列相同性を示す。従来、結合親和性解析には主に遊離脂肪酸が用いられてきたが、脂肪酸は水との親和性が低いため生体内で細胞膜中に存在していると考えられており、生体内環境を模倣した条件下での解析が課題である。また、不飽和脂肪酸を用いた結合親和性解析が多く、より詳細な特性を知るには様々な脂肪酸を使用した網羅的な測定が必要になる。本研究では松岡らが考案した手法を利用し、細胞膜の代替としてDMPCリポソーム存在下で炭素鎖長や不飽和度の異なる脂肪酸を作用させ、FABP3とFABP7の結合親和性を網羅的に比較した。Apo体のFABPと結合するANSの蛍光を用いて脂肪酸結合性解析を行った。すべてがApo体の時の蛍光強度の半分となる脂肪酸濃度であるEC50で評価したところ、FABP3はC9からC16の鎖長を持つ飽和脂肪酸に対して、FABP7はC13以上の鎖長を持つ飽和脂肪酸に対して結合親和性が高くなった。つまり、両タンパク質には鎖長選択制があることが明らかとなった。不飽和脂肪酸に対して、FABP3とFABP7は共に飽和脂肪酸よりも高い結合親和性を示した。また、FABP7はオレイン酸とドコサヘキサエン酸に対してFABP3よりも高い結合親和性を示した。