[2P-59*] レドックスバランス変化による加齢依存性ATTRアミロイドーシスの発症制御機構の解析
ATTRアミロイドーシスは、血清タンパク質であるトランスサイレチン(TTR)が細胞外で変性・凝集して、心臓・神経系を中心とした全身諸臓器に沈着する難治性疾患である。本疾患は加齢依存的にアミロイド線維を形成して発症するため、加齢に伴って変化する環境要因が疾患発症に関与することが示唆されているが、その詳細は明らかになっていない。これまでに、加齢により細胞外のレドックスバランスが酸化的状態にシフトすることが報告されていることから、生理的なレドックスバランスの変化が疾患発症を制御しているのではないかと仮説を立てた。そこで、レドックスバランス変化がTTRアミロイド形成に与える影響を検証したところ、TTRアミロイド形成は酸化的環境で促進され、還元的環境で抑制されることを新たに見出した。次に、レドックスバランス変化がTTRアミロイド形成を制御する分子機構の詳細な解析を行い、酸化的環境ではTTRが変性に伴って分子間でジスルフィド結合した二量体(S-S dimer)を形成することを発見した。S-S dimerはネイティブ状態のTTRとジスルフィド結合の架け替え反応を介して変性を誘導して、凝集体形成を促進することを明らかにした。興味深いことに、S-S dimer形成依存的に生じる凝集体のみが神経細胞に対する毒性を示すことから、加齢に伴う生理的なレドックスバランスの変化がS-S dimer形成の引き金となり疾患発症を制御する可能性が示唆された。