第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[2P-1] ポスター2(2P-01ー2P-37)

2021年6月17日(木) 14:45 〜 16:45 ポスター会場1

[2P-01] TGF-βシグナ伝達系における転写因子複合体の構造解析とその制御

宮園 健一1, 伊藤 友子1, 深津 由衣2, 和田 ひかる1, 栗崎 晃2, 田之倉 優1 (1.東大・院・農生科, 2.奈良先・先端科学)

 TGF-βは、細胞の多様な機能を制御する多機能性のサイトカインで、細胞増殖・分化、細胞死、免疫応答、細胞外マトリックス産生等の制御を担う。TGF-βの刺激を受けた細胞では、転写因子SMAD2/3のリン酸化が促進され、リン酸化依存的にSMAD2/3-SMAD4ヘテロ複合体が形成される。SMAD2/3-SMAD4ヘテロ複合体は、転写活性化因子であるCBPと相互作用することによって、TGF-βのシグナル依存的な転写を活性化する。TGF-βのシグナルは生体の調節に必要不可欠であり、その異常はがんの悪性化を誘導することが知られている。そのため、TGF-βシグナルの抑制はがん治療において有望な方法であるとされている。本研究では、TGF-βのシグナル依存的な遺伝子発現活性化の鍵となるSMAD2-CBP複合体の形成阻害を通じた新規TGF-βシグナル制御法の開発を目指し、SMAD2-CBP複合体の構造解析を行った。X線結晶構造解析法により、SMAD2-CBP複合体の立体構造を1.45Åの分解能で決定することに成功した。約20残基程度からなるCBPのSMAD2/3結合領域は、両親媒性のαヘリックスを形成し、SMAD2の疎水性分子表面に結合することが明らかになった。また、SMAD2に対してより強く結合するCBP改変ペプチド断片を作製し細胞内で発現させると、TGF-βシグナル依存的な転写を抑制できることが明らかになった。SMAD2-CBP結合界面は、新規TGF-βシグナル抑制剤の開発につながる重要な標的であると言える。