第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[2P-1] ポスター2(2P-01ー2P-37)

2021年6月17日(木) 14:45 〜 16:45 ポスター会場1

[2P-05] リン酸化および14-3-3ζによる転写因子FoxO3aの阻害メカニズムの解明

中塚 将一1, 桑山 知也1, 横川 真梨子1, 河津 光作1, 中村 吏佐1, 木村 友美1, 田辺 幹雄2, 千田 俊哉2, 齋藤 潤3, 佐谷 秀行3, 大澤 匡範1 (1.慶應大・院薬, 2.高エネ研・物質構造科学, 3.慶應大・院医)

FoxO3aは、アポトーシスを促進する転写因子である。がん細胞ではRasの変異を起源とするリン酸化シグナリングが亢進しており、FoxO3aはその下流に位置する。Ser/ThrキナーゼAKTにより2か所リン酸化を受けたFoxO3a (dpFoxO3a) はアダプタータンパク質14-3-3ζと結合するとともにDNAから解離し転写活性が低下する結果、がん細胞のアポトーシスが抑制され、がん細胞の増殖・悪性化につながる。したがって、14-3-3ζとdpFoxO3aの相互作用機構を原子レベルで明らかにできれば、がんの増悪機構の解明につながり、この相互作用阻害を標的とした新たながん治療薬の創製にも寄与できる。そこで本研究では、14-3-3ζとdpFoxO3aの相互作用を構造生物学的に解明することを目的とした。ヒト14-3-3ζおよびFoxO3a(残基番号1‐284; DNA結合ドメイン (DBD, 残基番号153‐253) とリン酸化部位T32, S253を含む領域)の大量調製法・AKTによるFoxO3aリン酸化法を確立した。SEC-MALSとITCにより、dpFoxO3aは14-3-3ζの二量体と1:1の複合体を形成し、両者のKdは70 nMでありdpFoxO3a-DNA間のKd (=40 nM) とほぼ同等であった。また、均一15N標識dpFoxO3aを用いた1H-15N HSQC NMRスペクトルにより14-3-3ζおよびDNAの滴定実験を行ったところ、14-3-3ζはdpFoxO3aのリン酸化部位だけでなくDBDと直接相互作用しdpFoxO3aとDNAとの結合を阻害することが示唆された。今後、dpFoxO3a - 14-3-3ζ複合体の立体構造を解析し、阻害機構の原子レベルでの解明を目指す。