第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[2P-1] ポスター2(2P-01ー2P-37)

2021年6月17日(木) 14:45 〜 16:45 ポスター会場1

[2P-25] 異なる機能状態にあるアクチンの構造ゆらぎとその相関関係

小池 亮太郎1, 森次 圭2, 太田 元規1 (1.名大・情報, 2.横市大・生命医)

アクチンは細胞内で大量に発現する蛋白質の1つであり,重合することでフィラメントを形成する。重合のさいに,アクチンはその構造を球状(G型)のものから,繊維状(F型)のものに変化させる。この主要な2構造の他にも,結合したヌクレオチドのリリースを促すオープン構造(O型)や,コフィリン結合型構造(C型)をとる。コフィリンはアクチンフィラメントに結合する蛋白質で,フィラメントを変形させる。アクチンはその立体構造を変化させながら,これらの状態を経て,その機能サイクルを実現している。我々はG型,F型,C型でのアクチンの分子動力学シミュレーションを行った。各状態での安定なシミュレーションは,ラトランキュリン,フラグミン,およびトウィンフィリンの複合体構造を利用することで可能となった。シミュレーションから得られた軌道データに主成分分析を適用し,各状態での構造ゆらぎを調べた。その結果,いずれの型でも主要な構造ゆらぎは3つあること,また,そのゆらぎのほとんどはG-F,G-O,F-Cの構造遷移の運動と相関することが分かった。この結果は,これらのゆらぎがアクチンの状態に関わらず構造そのものに内包されており,機能的な状態間の構造遷移に本質的なものであることを示唆する。