第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[2P-1] ポスター2(2P-01ー2P-37)

2021年6月17日(木) 14:45 〜 16:45 ポスター会場1

[2P-27] 分子動力学法による転写調節因子MED26と3種の天然変性蛋白質それぞれの認識メカニズムの検討

後藤 聡志1, 笠原 浩太2, 肥後 順一3, 高橋 秀尚4, 高橋 卓也2 (1.立命館大・院・生命, 2.立命館大・生命, 3.兵庫県立大・院・シミュレーション, 4.横浜市大・院・医)

真核生物の転写は非常に複雑であり、そのメカニズムはよくわかっていない。特に、転写対象に応じてメディエーター複合体がその構成を変えるメカニズムの詳細は未だに解明されていない。近年、メディエーター複合体のサブユニットの一つであるMED26のN末端ドメイン(MED26NTD)が、TAF7やEAF1、AFF4などの天然変性蛋白質と相互作用することで、分子スイッチとして機能することが明らかになってきた。すなわちTAF7との相互作用の後、EAF1またはAFF4との相互作用に切り替わることで反応が進行すると考えられている。しかし、MED26NTDがこれらの蛋白質をどのように認識しているのか、その微視的なメカニズムは明らかになっていない。そこで本研究では、マルチカノニカルMDシミュレーションを用いて検討を行った。計算は、MED26NTDとTAF7、MED26NTDとEAF1、MED26NTDとAFF4の計3種類の系の計算を行った。それらの系すべてに対して主成分分析に基づいて複合体の形成に関する自由エネルギー地形を作成した。その結果、いずれの系においても最安定構造では複合体を形成しているもののリガンドの形状が一定ではなく、多様な構造や配向がみられた。したがって、TAF7、EAF1、AFF4はMED26NTDとファジーコンプレックスを形成していると推測される。TAF7は結合に伴ってヘリックス構造をとり、EAF1やAFF4では、特定の二次構造を持たなかった。また、結合位置に大きな相違は見られなかったため、MED26NTDの同一位置を競合的に相互作用すると推測される。