第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[2P-2] ポスター2(2P-38ー2P-88)

2021年6月17日(木) 14:45 〜 16:45 ポスター会場2

[2P-43] 101F6ナノディスクを用いた電子移動反応の実験的解析

山口 葵1, Hamed Adel1,2, 鍔木 基成1, 木村 哲就1 (1.神戸大・院理・化, 2.Tanta Univ.)

癌抑制遺伝子として同定された101F6はCytochrome b561 (Cytb561)ファミリーに属する膜タンパク質であり、内分泌小胞膜に存在する。Cytb561では2つのb-typeヘムをもち、細胞質のアスコルビン酸から細胞質側のヘムbhが電子を受け取り、小胞内側のヘムblへと電子伝達をし、小胞側の鉄結合サイトで鉄還元を行うことが明らかとされている。一方で、101F6を発現させた細胞では、鉄過剰かつ酸素存在下においては“Ferroptosis”と呼ばれる不飽和脂肪酸過酸化による細胞死が引き起こされている可能性が示唆されている。そこで、本研究では101F6をナノディスクに再構成し、その還元型からの電子移動によって、ナノディスクを構成する脂質における変化をMASSスペクトル解析などを用いて明らかにすることを試みた。まず、101F6および膜骨格タンパク質MSPを酵母・大腸菌を用いてそれぞれ発現した。精製した101F6とMSPをDMPC存在下で混合し、界面活性剤を除去することによりナノディスクへの再構成を行い、His-tagカラム、ゲルろ過カラムの順に精製し、ナノディスクに再構成された101F6 (101F6-nd) のみを単離した。還元型101F6-ndを還元したところ、紫外・可視吸収スペクトル測定からCytb561に特徴的な561 nmの吸収バンドが確認できた。この101F6-ndに対して、生体内還元分子であるアスコルビン酸を反応させた還元型101F6-ndを調製し、鉄イオン存在下・非存在下、酸素分子存在下・非存在下での脂質過酸化を検討し、101F6のFerroptosis誘引の分子機構を明らかにする。