第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[3P-1] ポスター3(3P-01ー3P-47)

2021年6月18日(金) 15:15 〜 17:15 ポスター会場1

[3P-16] 酸化チタンナノシートと非界面活性剤スルフォベタインを用いた蛋白質のNMR構造解析法の開発

板坂 佑真1, 小篭 蒼1, 古板 恭子2, 杉木 俊彦2, 若松 馨3, 内田 紀之4, 石田 康博4, 相田 卓三5, 藤原 敏道2, 児嶋 長次郎1,2 (1.横浜国立大学大学院理工学府, 2.大阪大学蛋白質研究所, 3.群馬大学大学院理工学府, 4.理化学研究所創発物性科学研究センター, 5.東京大学大学院工学系研究科)

溶液NMRを用いた蛋白質の立体構造解析では、5 Å 以下の近距離の構造情報であるNOEを用いる。一方、残余双極子相互作用(RDC)と呼ばれる磁場となす角度を主とした構造情報を利用することでも立体構造解析が可能であり、理論的には配向軸が異なる5つの配向剤を用いることでRDCのみで立体構造解析が可能とされ、実験的にも2つの配向剤を用いてRDCのみで構造決定に成功した例がある。最近開発された配向剤である酸化チタンナノシート(TiNS)は、重水素の四極子分裂幅が従来の配向剤の5倍以上と大きく、多くの既存配向剤が磁場に対して平行に配向しているのに対し垂直に配向することから、直交配向剤の有力な候補の1つとして期待されている。本研究では、直交配向剤TiNSを蛋白質へ適用するため、TiNS表面に蛋白質が吸着して変性するという問題点を、蛋白質安定化剤として働く非界面活性剤スルフォベタイン(NDSB)類の添加によって解決することに成功した。GB1蛋白質をモデル蛋白質として用いたところ、NDSB類の添加によってTiNSで±10 Hz程度の比較的大きなRDC値が測定された。測定で得られたRDC値が既知NMR構造から計算されたRDC値と極めて高い相関を示したことから、直交配向剤TiNSと蛋白質安定化剤NDSB類との組み合わせは蛋白質のNMR構造解析に有効であると考えられる。