第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[3P-2] ポスター3(3P-48ー3P-87)

2021年6月18日(金) 15:15 〜 17:15 ポスター会場2

[3P-63] TIMバレルファミリーにおける構造エレメントの分子進化学的考察

高瀬 安迪1, 山崎 洋一1, 林 有吾1, 米澤 健人1,2, 藤間 祥子1, 上久保 裕生1,2 (1.奈良先端大・物質創成, 2.高エネ機構・物構研)

網羅的アラニン挿入変異解析や網羅的円順列置換変異解析の結果から、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)中には、配列の分断を許容しない領域が複数存在することが知られている。これらの領域は蛋白質の基本部品と考えられ、構造エレメント(SE)やFolding Element(FE)と呼ばれている。しかしながら、実験には膨大な時間を要するため、完全にSEやFEが同定された蛋白質は限られていた。近年、我々はSEが蛋白質内のコンタクトを指標として予測可能であることを示してきた(Takase et al. BPPB 2021)。SEが部品の一種であるならば、天然に存在する蛋白質はSEを反映した分子進化を遂げているはずである。本研究では、分子進化におけるSEの位置保存性やSEの獲得過程を明らかにすることを目的として、共通構造モチーフ(TIMバレル)を保持し30種を上回るサブファミリーを有するTIMバレルファミリーに着目し、保存性が低い5つのファミリーに対して網羅的にSEの予測を行った。共通モチーフ内には、すべてのファミリーで保存されたSEが存在し、分子系統樹の分岐に伴い、ファミリー内で保存されたSEを獲得していく様子が明らかとなった。以上の結果は、TIMバレルの基本骨格を担う保存されたSEが存在すると同時に、機能分化に伴い付加されていくファミリー内共通SEが存在することを示唆しており、SEが構造形成や機能獲得に密接に関連した部品の一種であることを強く支持するものである。