第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ワークショップ

[WS1] 分子夾雑の蛋白質科学における新展開

2021年6月16日(水) 18:00 〜 20:30 チャンネル1

オーガナイザー:浜地 格(京都大学)、王子田 彰夫(九州大学)

共催:新学術領域 分子夾雑の生命化学

18:05 〜 18:29

[WS1-01] 抗体クリック反応による細胞表面選択的凝集による機能制御

小松 徹1, 姜 悦1, 石井 遥暁1, 山口 藍子2, 土釜 恭直2, 浦野 泰照1,3,4 (1.東大・薬, 2.Health Science Center at Houston, Univ. of Texas, 3.東大・医, 4.AMED-CREST)

現在、がんをはじめとする疾患に対する様々なモダリティーの治療薬が用いられているが、近年では、抗体と有機小分子の機能を組み合わせたantibody-drug conjugateを設計して、高度な機能性を有する治療薬として利用する試みがなされている。このような中で、近年のphotoimmunotherapyの殺細胞メカニズムに関する報告(K. Sato et al., ACS Central Sci. 2018)に見られるように、抗体修飾分子の物性の変化を利用して凝集性などの抗体の性質を変化させること自体が、細胞に対する抗体の機能を制御する目的に利用できる可能性が示唆されている。当研究室では、特定の抗体どうしのクリック反応(生体直交性を有する共有結合形成反応)が、細胞表面に豊富に存在する抗原を認識する際の有効濃度上昇を反映して加速することを利用し、細胞表面で選択的に抗体の凝集体を形成させる新たな実験系の構築をおこなった(T. Komatsu et al., J. Am. Chem. Soc. 2020)。適切なクリック反応速度を有する反応部位を異なる長さのpolyethylene glycol鎖で繋いだAntibody clickers(AbC)により修飾をおこなったtrastuzumab(Herceptin)をHER2過剰発現細胞に添加したところ、細胞表面で抗体が凝集体を形成し、これに伴い、(1) 抗体のエンドサイトーシスの促進、(2) 標的抗原の下流のシグナル伝達の促進、が起こるという興味深い知見を見出した。本講演では、これらの実験系の設計および観察された現象の生物学的意義について議論したい。