第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ワークショップ

[WS1] 分子夾雑の蛋白質科学における新展開

2021年6月16日(水) 18:00 〜 20:30 チャンネル1

オーガナイザー:浜地 格(京都大学)、王子田 彰夫(九州大学)

共催:新学術領域 分子夾雑の生命化学

19:17 〜 19:41

[WS1-04] 走査型プローブエレクトロスプレーイオン化法による生体組織内多次元化学分布情報計測

大塚 洋一 (阪大・理・化)

我々の構成単位である細胞は、健康状態に応じてその分子夾雑環境が多彩に変化する。一細胞レベルで分子夾雑情報を計測し、細胞や組織の状態を表現する特徴量を獲得できる技術は、生命化学分野の基礎理解と疾病の究明・予知・予防の高度化の上で極めて重要である。質量分析イメージング法(MSI; mass spectrometry imaging)は、生体試料の分子群をイオン化し、質量分析を行うことで、多彩な生体成分の分布を可視化する。我々は、大気圧下で試料の局所抽出と迅速イオン化を行う分析技術「タッピングモード走査型プローブエレクトロスプレーイオン化法(t-SPESI)」を開発してきた。t-SPESIは、振動するキャピラリプローブを用いて、ピコリットル溶媒への成分抽出とそれらのイオン化を実現する。試料上でプローブを走査し、位置情報に紐付いたマススペクトルを計測することで、成分分布を可視化する事ができる。高空間分解能MSIのためには、プローブからの溶媒供給の安定化が重要である。そこで、プローブ振動の計測法とフィードバック制御法を開発した。プローブ側面からレーザ光を照射し、その影の位置を検出することで振動振幅を捉え、さらに振動振幅が一定となるように試料ステージの高さを高速に調整することで、凹凸のある試料のプローブ走査を安定化し、高空間分解能MSIを実現した。本講演では、t-SPESI計測システムの研究開発と、ヒト生体組織切片や細胞群の多次元化学分布情報計測の結果を報告する。