SCIENCE CASTLE2018

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関東大会 » 口頭発表②

[ES201] 口頭発表 O-7〜O-12

Mon. Dec 24, 2018 10:00 AM - 11:30 AM 口頭発表会場 (1F 講堂)

[O-7] クロクサアリがヒトスジシマカ(メス)に与える影響

並木健悟 (早稲田大学高等学院 理科部生物班)

Keywords:蚊、蟻、ヒトスジシマカ、クロクサアリ、殺虫成分

<概要>
クロクサアリの分泌物はヒトスジシマカ(メス)を殺傷する能力がある。その分泌物のヘキサン抽出物は、薄層クロマトグラフィー(展開溶媒(酢酸エチル:ヘキサン=4:6))を行ったとき、Rf値が0.77となる物質であることがわかった。
<考察・展望>
<考察>

実験1~4の結果は以下の4点を示唆している。

Ⅰ クロクサアリが分泌した粘度の高い物質はヒトスジシマカ(メス)を死亡させた。

Ⅱ クロクサアリは、その保管容器を振るなどの刺激を受けると、ヒトスジシマカ(メス)を殺傷する分泌物を放出すると考えられる。

Ⅲ クロクサアリの分泌した粘度の高い物質をヘキサンに溶かしたものは、薄層クロマトグラフィー(展開溶媒(酢酸エチル:ヘキサン=4:6))でRf値が0.77付近となる物質を主に含んでいた。

Ⅳ クロクサアリの分泌する化学的成分はヒトスジシマカ(メス)を殺傷すると同時に、クロクサケアリ自身をも殺傷する可能性がある(実際、別の実験ではあるが、刺激をあまり加えていないクロクサアリを、刺激されたクロクサアリの分泌物の入った容器に入れると、死亡する現象が見られた)。

クロクサアリが蚊を殺傷する能力を持つことは知られていないが、本研究の実験結果は、クロクサアリの分泌物がヒトスジシマカを殺傷する可能性を示した。

クロクサアリの大顎腺から抗菌活性物質が単離・同定されていて、その抗菌活性物質はシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって10%エタノール/ヘキサン画分に溶出することが確認されている(Akino J. et al, Nippon Nogeikagaku Kaishi Vol. 69, No. 12, pp 1581~1586, 1995)。本研究で発見されたヒトスジシマカ(メス)の殺傷成分は、この抗菌活性物質と関連がある可能性があるが、実証はされていない。

<結論・展望>

この研究によって以下の2点が明らかとなった。

Ⅰ クロクサアリの分泌物はヒトスジシマカ(メス)を殺傷する能力がある。

Ⅱ その分泌物のヘキサン抽出物について、薄層クロマトグラフィー(展開溶媒(酢酸エチル:ヘキサン=4:6))を行うと、Rf値が0.77付近のスポットがみられる。

現在、クロクサアリ分泌物をGCMSによって分析することにって、それに含まれるヒトスジシマカ(メス)を殺傷する成分を明らかにしつつある。この研究を完成させ、人類にとって大変危険なウィルスを媒介する蚊を安全に除去する方法の開発に役立てたいと考えている。