サイエンスキャッスル2018

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[SS107] ポスター発表 偶数

2018年12月16日(日) 15:15 〜 15:55 ポスターエリア (2F 第一研修室、3F第二研修室・調理実習室)

[P-6] 山口県産カワネズミの分布と環境への適応

田中美伶 (学校法人山口高川学園中学校 科学部)

キーワード:絶滅危惧種、地域変異、適応

<概要>
カワネズミChimarrogale platycephalus (Temminck,1842)は、北海道を除く日本列島の全域と隣国に広く分布する1属1種から成るトガリネズミ科(食虫類)の小哺乳類である。生態には不明な点が多く、すでに幻の動物になった地域も多い。私達は中学1年から、この希少種の分布や生態を調べてきたが、他県の個体に比べ尾率%に大きな違いがあることに気付いた。この変異は環境への適応と考え、実験による証明を試みた。
<考察・展望>
水かきをもたないカワネズミは、水中を泳ぐ際に尻尾の動きだけで推進力を生み出す。長野県は3000m級の中部山岳地帯に源流をもち水量も多い。これに対する山口県は、約三分の一の西中国山地に源流を持つ二級河川であるが、海までの距離が短いため急流を成している。尾率%は、採餌する河川環境への適応と考えられる。その仮説を証明するため実験を行った。生息する渓流の水圧は大きく、ホース径の10倍以上になるので、模型の形態を小さくした。10mm差で3段階の尾率を作り、180°・150°・120°・90°の4種類の尾の角度で比較したところ、急流には長い尾よりも短い方が安定感を増すが、短過ぎない適切な長さがあった。これにより、環境への適応が種の多様性を育んだという仮説を証明できた。