サイエンスキャッスル2018

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[SS106] ポスター発表 奇数

2018年12月16日(日) 14:35 〜 15:15 ポスターエリア (2F 第一研修室、3F第二研修室・調理実習室)

[P-11] 川底の落葉溜まりのバイオームと両生類の毒液の関係

荒地香澄 (学校法人山口高川学園中学校 科学部)

キーワード:粘液、体液、毒液、バイオーム、付着藻類、生物濃縮

<概要>
両生類は水辺に生息している脊椎動物で、カエルのように成体には尻尾の無い無尾目と、サンショウウオやイモリのように長い尾をもつ有尾目がいる。この尾の長い仲間は古生代から生き続けていて、特にオオサンショウウオは生きた化石と呼ばれている。

私はこれまで二年間、オオサンショウウオの食性「食べ物が排泄物から分かった」と、幼生(体長50mm)が潜んでいる「川底の落葉溜りのバイオーム」の研究をしてきた。どちらも河川という「自然界のつり合い」の中で、オオサンショウウオの「まだ知られていなかった生活のようす」を調べたものであり、本種の希少性を証明した貴重な発見となった。そして、2018年度改訂予定の『レッドデータブック山口県版』では絶滅危惧ⅠA類(CR)に指定され、2018年8月に放流が始まった特別天然記念物の移植地には、河川環境が大切であることを強くはたらきかけることができた。

研究を始めて三年目の今年は、これまでのまとめの年にしたいので「一番疑問に思った現象」について計画をたてた。

その疑問は「最悪に臭い粘液」である(図1)。そのきっかけは、昨年の『サイエンスキャッスル九州大会・2017/12/17』において、高校生のアカハライモリの体液の研究を聞いたときである(写真1)。

「フグ毒と同じテトロドトキシン」と発表していたが、分泌量が少なく結論は出ていなかった。このとき私は、「オオサンショウウオの皮膚から分泌される多量の臭い粘液は同じ成分ではないのか…」と思った(図2)。

そこで「臭い粘液は毒液である」と仮説をたて、研究をスタートした。
<考察・展望>
オオサンショウウオの粘液2種類の結果と、その傾向が似ている5種類の粘液を選び表にした(表7)オオサンショウウオの生息地には、石苔(ケイソウ・ランソウ・リョクソウ)が21種類みつかっている。そのうちの10種類がアユの体内から見つかっている。この食べ物の種類によってアユの香りが変わることは、昨年、高校生の科学部先輩が見つけていた。

この考え方を、私のオオサンショウウオの粘液に当てはめてみた。また





図4 川底の生産者(付着藻類)と消費者の食物網

、フグ毒の生物濃縮。文献のアイガモの死亡例を、昨年までの私の研究の「落葉溜まりのバイオーム」にも当てはめながら考えた。

やはり、着想類の体内で生産された毒成分が、生物濃縮されて「両生類毒」としてちくされる可能性は捨てきれないが。この毒素とレクチンあるいはムチンは別の用途の物質であると、これからはわけて考えないといけないと思いついた。

つまり、オオサンショウウオは、天敵を追い払うときに臭い匂いを出すが、この中に毒性を持つテトロドトキシンが含まれている否かは、アオコが発生している流域かどうかに左右される。

これを確認したのは、飼育施設の個体は臭い粘液を分泌するが、量と毒性が減少しており、この二つの性質は別々に適応した器官だと思われる。

今後は、テトロドトキシンそのものを検出する技能を身につけたい。またこれによって、オオサンショウウオの飼育するときの水質や、生息地に理想とされる石苔は何かがわかれば、これを指標とした川の水質管理にも応用できると思われる。