5:00 PM - 5:15 PM
[S02-09] Demonstration experiment of disaster prevention network by post-earthquake damage evaluation meter in Tokushima Part 3
1.はじめに
筆者らは、被災度判定計で計測したデータ(以下、計測入力データという)の利活用方法の1つとして巨大地震時被災度予測法の研究開発を行っている1)。この巨大地震時被災度予測手法には、地震応答スペクトルを用いている。本報では、この地震応答スペクトルを用いたSa-Sd曲線の形状や応答値について検証を行う。なお、本報はその1:実証実験の概要と被災度判定計の設置(2018年度発表)、その2:計測入力データとその利活用(2019年度発表)の続報である。
2.計測入力データについて
本実証実験は、徳島県(徳島市、阿南市、美馬市)で行い、我々の研究グループが管理しているデータベースに計測入力データを現在も集積し続けている。本報で扱う計測入力データの期間は、その2と同様に、2017年10月~2019年6月とする。この期間に、気象庁の発表で徳島県内に震度1以上の観測があった場合が56件あった。このうち実証実験の対象建物で計測があったものが31件であり、対象建物37棟のうち20棟以上で計測があった地震は11件であった。また、併せて同市内にある防災科学研究所強震観測網(K-NET)にて計測されたデータとも比較検証を行う。
3.Sa-Sd曲線に関する検討
2.計測入力データで述べた地震11件のうち、計測震度が最も大きかった2019年3月13日震央地名:紀伊水道の地震(被災度判定計の最大計測震度4.1)における阿南市建物No.25~29の建物と同市内のK-NETにおけるSa-Sd曲線を図1に示す。図1の左側は絶対値、右側は設計用応答スペクトルに基準がしたSa-Sd曲線である。Sa-Sd曲線作成方法は、参考文献2)をもとに変位応答スペクトル(Sd)と加速度応答スペクトル(Sa)を算出し、x軸にSd、y軸にSaをプロットすることで作成する。
絶対値のSa-Sd曲線を比較してみると、建物ごとに形状や応答変位、応答加速度の大きさが大きく異なることがわかる。No.26とNo.29の建物の応答変位を比較すると約3倍以上、応答加速度を比較すると約5倍以上である。次に基準化した場合、応答加速度は概ね一致しているが、No.25、26、28の建物においては最大応答変位が7.5㎝を超えている。また、絶対値と同様に形状についても建物ごとに大きく異なっていることがわかる。同一市内の建物であっても、建物ごとにSa-Sd曲線の性状が大きくことなることが確認された。
4.まとめ及び今後の課題
本報では、計測入力データの利活用の1例として巨大地震時被災度予測手法に用いる地震応答スペクトルで作成したSa-Sd曲線について検証を行った。その結果、建物ごとにSa-Sd曲線の形状も、最大応答変位、最大応答加速度も大きく異なることが確認された。今後は、ビッグデータを集積し、地盤の揺れやすさ及びその建物のSa-Sd曲線の形状の特徴を統計的に分析することで、建物の入力(揺れやすさ)についての傾向が明らかとなる可能性がある。また、現在の建物の設計法は1方向のみを考慮したスペクトルを用いているが、建物の設計にはXY方向やNSEW方向など2方向を考慮した設計を行う必要があると考えられる。
謝辞:本報の内容に一部は総務省平成28年度補正予算IoTサービス創出支援事業によるものである。また、関係者の方々には多大なるご協力を得た。ここに記して謝意を表する。
参考文献
1)梶川久光,その他:建築物の被災度判定計による防災ネットワークの研究開発 その13,日本建築学会大会梗概集,2018年
2)柴田明徳:最新耐震構造解析,森北出版株式会社,2009
謝辞:本報の内容の一部は総務省平成28年度補正予算IoTサービス創出支援事業によるものである。また、関係者の方々には多大なるご協力を得た。ここに記して謝意を表する。
筆者らは、被災度判定計で計測したデータ(以下、計測入力データという)の利活用方法の1つとして巨大地震時被災度予測法の研究開発を行っている1)。この巨大地震時被災度予測手法には、地震応答スペクトルを用いている。本報では、この地震応答スペクトルを用いたSa-Sd曲線の形状や応答値について検証を行う。なお、本報はその1:実証実験の概要と被災度判定計の設置(2018年度発表)、その2:計測入力データとその利活用(2019年度発表)の続報である。
2.計測入力データについて
本実証実験は、徳島県(徳島市、阿南市、美馬市)で行い、我々の研究グループが管理しているデータベースに計測入力データを現在も集積し続けている。本報で扱う計測入力データの期間は、その2と同様に、2017年10月~2019年6月とする。この期間に、気象庁の発表で徳島県内に震度1以上の観測があった場合が56件あった。このうち実証実験の対象建物で計測があったものが31件であり、対象建物37棟のうち20棟以上で計測があった地震は11件であった。また、併せて同市内にある防災科学研究所強震観測網(K-NET)にて計測されたデータとも比較検証を行う。
3.Sa-Sd曲線に関する検討
2.計測入力データで述べた地震11件のうち、計測震度が最も大きかった2019年3月13日震央地名:紀伊水道の地震(被災度判定計の最大計測震度4.1)における阿南市建物No.25~29の建物と同市内のK-NETにおけるSa-Sd曲線を図1に示す。図1の左側は絶対値、右側は設計用応答スペクトルに基準がしたSa-Sd曲線である。Sa-Sd曲線作成方法は、参考文献2)をもとに変位応答スペクトル(Sd)と加速度応答スペクトル(Sa)を算出し、x軸にSd、y軸にSaをプロットすることで作成する。
絶対値のSa-Sd曲線を比較してみると、建物ごとに形状や応答変位、応答加速度の大きさが大きく異なることがわかる。No.26とNo.29の建物の応答変位を比較すると約3倍以上、応答加速度を比較すると約5倍以上である。次に基準化した場合、応答加速度は概ね一致しているが、No.25、26、28の建物においては最大応答変位が7.5㎝を超えている。また、絶対値と同様に形状についても建物ごとに大きく異なっていることがわかる。同一市内の建物であっても、建物ごとにSa-Sd曲線の性状が大きくことなることが確認された。
4.まとめ及び今後の課題
本報では、計測入力データの利活用の1例として巨大地震時被災度予測手法に用いる地震応答スペクトルで作成したSa-Sd曲線について検証を行った。その結果、建物ごとにSa-Sd曲線の形状も、最大応答変位、最大応答加速度も大きく異なることが確認された。今後は、ビッグデータを集積し、地盤の揺れやすさ及びその建物のSa-Sd曲線の形状の特徴を統計的に分析することで、建物の入力(揺れやすさ)についての傾向が明らかとなる可能性がある。また、現在の建物の設計法は1方向のみを考慮したスペクトルを用いているが、建物の設計にはXY方向やNSEW方向など2方向を考慮した設計を行う必要があると考えられる。
謝辞:本報の内容に一部は総務省平成28年度補正予算IoTサービス創出支援事業によるものである。また、関係者の方々には多大なるご協力を得た。ここに記して謝意を表する。
参考文献
1)梶川久光,その他:建築物の被災度判定計による防災ネットワークの研究開発 その13,日本建築学会大会梗概集,2018年
2)柴田明徳:最新耐震構造解析,森北出版株式会社,2009
謝辞:本報の内容の一部は総務省平成28年度補正予算IoTサービス創出支援事業によるものである。また、関係者の方々には多大なるご協力を得た。ここに記して謝意を表する。