16:45 〜 17:00
[S06-22] 南西諸島におけるP波・S波減衰構造
九州南端から台湾北東にかけて位置する南西諸島を対象として,Komatsu and Takenaka (2017, IASPEI)はP波およびS波の減衰トモグラフィを行った.その際,震源スペクトルのコーナ周波数fcは気象庁マグニチュードから算出し,Qが周波数に独立であるとして減衰量t*を決定した.本研究では,南西諸島で発生した地震について,Sコーダ波のスペクトル比から推定したfc(小松・竹中,2018,地震学会)を採用し,Qの周波数依存を考慮してt*を決定した.決定したt*を用いて減衰トモグラフィを行い,Q-1の3次元空間分布を推定した.対象とした地震は,南西諸島で2002年6月~2017年5月の期間に発生した2874イベント(Fig. 1)である.観測波形記録のP波およびS波初動を3秒間切り取り,振幅スペクトルを計算した.Qが周波数fに依存して変化すると仮定すると,1 HzのQ0を用いてQ = Q0fαと表現される.本研究では,P波とS波のスペクトルから,Qの周波数依存性を考慮したt*の決定を行い,αの最適値を見積もった.その値は,P波とS波でそれぞれ0.55と0.8である.次に,t*をデータとして地震波減衰トモグラフィを行った.波線追跡に必要なモホ面は公開されている最新の反射法探査の結果をコンパイルしてモデル化し,沈み込むフィリピン海(PHS)プレート上面は最新のモデルを採用した.推定されたQ-1の空間分布より,以下のことが分かった.沖縄トラフ内や火山活動が活発な地域において,高減衰領域が広がっている.これは地下から供給される高温物質や流体が原因と考えられる.沈み込むPHSプレートに沿ったQ-1の分布と南西諸島で発生した短期的スロースリップ・イベント(SSE)の断層モデルを重ねると(Fig. 2),PHSプレート直上の高減衰域と一致した.沈み込むPHSスラブから供給された流体(例えば,脱水した水)がSSEに大きく関わっていると考えられる.
謝辞:防災科研,気象庁,鹿児島大の波形記録,気象庁一元化処理震源データを使用しました.波線追跡にはZhao et al. (1992, 1994)によるコードを使用しました.
謝辞:防災科研,気象庁,鹿児島大の波形記録,気象庁一元化処理震源データを使用しました.波線追跡にはZhao et al. (1992, 1994)によるコードを使用しました.