11:00 AM - 11:15 AM
[S09-06] Successively occurring large earthquakes in the world (2) -Successive occurrence and simultaneous occurrence of same class earthquakes-
南海トラフ地震の沿いの防災対応のための委員会が開催され,その際の資料となるべく,世界における大規模地震の続発性について,報告を行ってきた(橋本他,2017など).今回は,この委員会とはやや離れて,南海トラフの地震の特徴の一つである安政や昭和の地震のような同規模の地震の続発と宝永の地震のように東海と南海の連動のような現象が,世界の大規模地震の発生について,新たに改訂されたISC-GEM version5.1のデータ(1904-2014年)を用いて抽出することが出来るか検討を行った.
安政の東海と南海の地震等はdoubletといえるが,doubletの地震の研究は,Lay and Kanamori(1980)によるSolomon諸島の地震,Kagan and Jackson(1999)による世界の地震の解析など多数あるものの,その定義として,2つの地震のM差や時空間距離について固定的ではない.そこで,ここでは,doubletとして可能性のありそうな地震の組み合わせを比較的多く抽出するため,やや幅広にとるようにして,M±0.3,空間距離d ×2; log d = (0.5M - 1.8)(宇津の余震長径(1962)の2倍),時間差11年として検索を行った.また,震源の深さは,カタログ初期の誤差も考慮し,150㎞以浅とし,M7.2以上の地震を対象とし,Mの小数第2位を四捨五入して,検索を行った.
先行地震に対する後続地震の関係が上記の条件に合ったものは,重複を許すようにして,252個が抽出された.その内,先行地震(図1の青×)と後続地震の両方がM7.8≦M<8.6の事例が39個あり,後続地震が3年以内に発生した事例(黄緑×)は13個,3日以内は5個(桃×)となり,ここでは,1707年宝永地震がM8.6 とされているので,それより小さいが,やや規模の大きめの地震の続発性を図1に示した.M8.6以上の地震(赤×)の近傍で続発性を示す地震は,1957Aleutian地震,2005Sumatra地震 ,2011Tohoku地震の3事例にみられた.Aleutian地震の周りでは,1986年M7.95 と1996年M7.88 が抽出されているが,やや小ぶりな地震である.また,その隣接で1965RatsIsland地震が発生しており,その近傍では,1906年8月17日M8.3(なお,同日のチリのM8クラスの地震がISCGEMには登録されていないようなので注意が必要)の地震や2014年M7.92の地震が発生しており,これらの地域では活動が活発である.Sumatra地震の近傍では,2012年の横ずれ断層の地震が抽出されているが,別物といってもいいと考える.Tohoku地震の近傍も1938年M7.95や1968年M8.2の地震が抽出されているが,それらが連動してTohoku地震になったわけではないので,別物と考える.結局,100年程度の計測器による地震観測からは,南海トラフの連動と同規模の地震の続発の関係を見出すことは,やはり無理があるようである.
そこで,MをM7.2から抽出して,doublet地震がよくみられるソロモン諸島周辺に着目したものを図2(発震機構はUSGS及びLay and Kanamori,1980)に示す.よく知られている1971年,1974年,1975年(Lay and Kanamori,1980)の地震が抽出されている.地震の規模から断層長を推定し,おおよその位置に震源断層を長方形(幅は意味がない)で図が重ならないように示した.1971年の地震と発生時間間隔,Mや破壊の順番が異なるが,1916年M7.96(+1920年M7.81) → 1919年M8.15(赤枠)が同じようともいえるかもしれないし,やや無理があるが,1983+1992年→2000年(緑枠) がある.空間の位置精度の問題もあるが,同じようなアスペリティーが破壊されているように思える.また,1974年(橙枠)と1975年(茶枠)の一方で,1939年M7.82の地震の領域が破壊されているようにも見え,連動と同規模の続発性を示している事例かもしれない.その後に同様なものの繰り返しが期待されるが,しかしながら,そのような現象は発生していない.
ISCGEMを用いて,南海トラフの連動・同規模地震の続発性を探してみたが,同様なものは,なかなか見出すことが難しいように思われる.
謝辞:ISCのISCGEMver5.1を使わせていただいた.
安政の東海と南海の地震等はdoubletといえるが,doubletの地震の研究は,Lay and Kanamori(1980)によるSolomon諸島の地震,Kagan and Jackson(1999)による世界の地震の解析など多数あるものの,その定義として,2つの地震のM差や時空間距離について固定的ではない.そこで,ここでは,doubletとして可能性のありそうな地震の組み合わせを比較的多く抽出するため,やや幅広にとるようにして,M±0.3,空間距離d ×2; log d = (0.5M - 1.8)(宇津の余震長径(1962)の2倍),時間差11年として検索を行った.また,震源の深さは,カタログ初期の誤差も考慮し,150㎞以浅とし,M7.2以上の地震を対象とし,Mの小数第2位を四捨五入して,検索を行った.
先行地震に対する後続地震の関係が上記の条件に合ったものは,重複を許すようにして,252個が抽出された.その内,先行地震(図1の青×)と後続地震の両方がM7.8≦M<8.6の事例が39個あり,後続地震が3年以内に発生した事例(黄緑×)は13個,3日以内は5個(桃×)となり,ここでは,1707年宝永地震がM8.6 とされているので,それより小さいが,やや規模の大きめの地震の続発性を図1に示した.M8.6以上の地震(赤×)の近傍で続発性を示す地震は,1957Aleutian地震,2005Sumatra地震 ,2011Tohoku地震の3事例にみられた.Aleutian地震の周りでは,1986年M7.95 と1996年M7.88 が抽出されているが,やや小ぶりな地震である.また,その隣接で1965RatsIsland地震が発生しており,その近傍では,1906年8月17日M8.3(なお,同日のチリのM8クラスの地震がISCGEMには登録されていないようなので注意が必要)の地震や2014年M7.92の地震が発生しており,これらの地域では活動が活発である.Sumatra地震の近傍では,2012年の横ずれ断層の地震が抽出されているが,別物といってもいいと考える.Tohoku地震の近傍も1938年M7.95や1968年M8.2の地震が抽出されているが,それらが連動してTohoku地震になったわけではないので,別物と考える.結局,100年程度の計測器による地震観測からは,南海トラフの連動と同規模の地震の続発の関係を見出すことは,やはり無理があるようである.
そこで,MをM7.2から抽出して,doublet地震がよくみられるソロモン諸島周辺に着目したものを図2(発震機構はUSGS及びLay and Kanamori,1980)に示す.よく知られている1971年,1974年,1975年(Lay and Kanamori,1980)の地震が抽出されている.地震の規模から断層長を推定し,おおよその位置に震源断層を長方形(幅は意味がない)で図が重ならないように示した.1971年の地震と発生時間間隔,Mや破壊の順番が異なるが,1916年M7.96(+1920年M7.81) → 1919年M8.15(赤枠)が同じようともいえるかもしれないし,やや無理があるが,1983+1992年→2000年(緑枠) がある.空間の位置精度の問題もあるが,同じようなアスペリティーが破壊されているように思える.また,1974年(橙枠)と1975年(茶枠)の一方で,1939年M7.82の地震の領域が破壊されているようにも見え,連動と同規模の続発性を示している事例かもしれない.その後に同様なものの繰り返しが期待されるが,しかしながら,そのような現象は発生していない.
ISCGEMを用いて,南海トラフの連動・同規模地震の続発性を探してみたが,同様なものは,なかなか見出すことが難しいように思われる.
謝辞:ISCのISCGEMver5.1を使わせていただいた.