日本地震学会2019年度秋季大会

講演情報

C会場

特別セッション » S22. 地震学における機械学習の可能性

[S22]PM-1

2019年9月18日(水) 14:30 〜 16:00 C会場 (総合研究8号館NSホール)

座長:小寺 祐貴(気象庁気象研究所)、内出 崇彦(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

15:15 〜 15:30

[S22-13] 再帰型ニューラルネットワークによる2011年東北地方太平洋沖地震の余効変動の機械学習

*山佳 典史1、三井 雄太2 (1. 静岡大学大学院総合科学技術研究科、2. 静岡大学理学部地球科学科)

2011年東北地方太平洋沖地震以来,余効変動が続いている.この余効変動の影響により,各種スローイベントの小さなシグナルが隠れている可能性がある.余効変動は,一般に,対数関数や指数関数,またその組み合わせによってフィッティングされている.この余効変動をより正確に表現するために,機械学習手法の1つであるニューラルネットワークを導入し,既存のデータから特徴を学習する.余効変動の時系列データとして,国土地理院のGNSS(Global Navigation Satellite System)観測網に基づく東西成分,南北成分の変位を用いる.観測点数は191点である.191の観測点のうち,153点を学習用の観測点とし,残りの38点をテスト用の観測点とした.テスト用の観測点は,空間的な偏りが生じないよう,緯度・経度それぞれを0.5度ずつ区切ったグリッドごとに,1点ずつ選択した.学習時には,観測点ごとに,時系列の前半90%を使用する.学習で用いるデータを用いて,観測点ごとに変位量を0.1~0.9に値を正規化した.時系列データを365日ごとに区切り,連続した365日を入力データとし,その次の日の値を出力データとした.ニューラルネットワークの層は,単純化のために1層に固定し,LSTMを32個設定した.ここでLSTMは,複数のニューロンから構成されるユニットであり,長期時間依存性を学習できる.損失関数には平均絶対誤差を,最適化アルゴリズムにはAdamを用いた.学習したモデルを用いて,2種類の予測実験を行う.実験1では,38点のテスト点で,東北沖地震後365日経過した時点からの余効変動を期間の最後まで予測して,実データと比較する.実験2では,191の全観測点に対し,学習へ使用していない時系列の後半10%について,余効変動の予測および実データとの比較を行う.2種類の実験の両方で、従来の回帰分析を上回る結果を得られた.特に,実験1の結果の時空間分布からは、太平洋側の,特に岩手県沖・福島県沖の領域で,2013年中頃から,予測よりも実データが西向きにずれていくことがわかる.これは,東北沖地震後の余効変動の減衰と,プレート境界の固着状態変化の和を表すと考えられる.