日本地震学会2019年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(3日目)

特別セッション » S22. 地震学における機械学習の可能性

S22P

2019年9月18日(水) 13:00 〜 14:30 P会場 (時計台国際交流ホールII・III)

13:00 〜 14:30

[S22P-07] 常時地球自由振動の振幅の時系列解析

*功刀 龍一1、須田 直樹1 (1. 広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)

常時地球自由振動とは地震の有無にかかわらず固体地球が常に微弱に自由振動している現象のことであり[e.g. Suda et al. 1998] 、大気や海洋が固体地球に及ぼす力によって励起されている [e.g. Nishida 2013] 。また常時地球自由振動の振幅は季節変動することが知られている [Nishida et al. 2000] 。長周期重力波(IG波)は海洋で発生する長周期の波(周期:30-300秒)であり [e.g. Munk 1949] 、海岸に到達した短周期波により生成され、海底面に向かって伝播する [Longuet-Higgins and Stewart 1962] 。またIG波は固体地球の周期50-300秒の表面波を励起することがわかっている [e.g. Rhie and Romanowicz, 2004, 2006] 。前回の研究では常時地球自由振動の振幅とIG波の高さの永年変動を調べたが、有意な対応関係は見られなかった。そこで本研究では常時地球自由振動の振幅とIG波の高さの年周変動を比較し、両者に年周変動の対応関係が見られるか調べた。



 常時地球自由振動のデータとしてSTS-1型広帯域地震計(63観測点)の上下動記録を用いた。解析期間は2000-2017年である。連続時系列データから3日長のデータを1日ずらしで切り出し、FFTで時間領域から周波数領域に変換するともに、計測システムのレスポンスを周波数領域で補正して、各観測点のパワースペクトル密度(PSD)を求めた。ノイズのあるデータを排除し、周波数帯域をシグナル帯とノイズ帯に分割して、Signal-Noise PSD、Signal PSD、Noise PSDの1ヵ月平均をそれぞれ計算した。IG波はWaveWatch-III [Tolman et al. 1996] のIG波の高さのグリッドデータを用いた。解析期間は2008-2017年で3時間間隔のデータをそれぞれ北半球、南半球に分けて平均し、それらを1ヵ月ごとに平均し1ヵ月平均のIG波の高さを求めた。また両者の年周変動を見るために、統計モデルであるProphet [Taylor and Letham, 2017]を用いた。Prophetは加法モデルを用いて機械学習から時系列解析を行うモデルである。R言語のProphetパッケージを用いて解析した。



Prophetで推定された各月のPSDの大きさについて年周変動の特徴をみると、Signal PSD(紫線)は7月と12月にピークがある半年周変動が見られた。Noise PSD(青線)は12月または1月にピークがある年周変動が見られた。Signal PSDからNoise PSDを引いたSignal-Noise PSD(赤線)は7月にピークがある年周変動が見られた。IG波の高さについては、北半球平均(黄緑線)は12月または1月にピークがある年周変動が見られ、南半球平均(緑線)では7月にピークがある年周変動が見られた。Signal-Noise PSDと南半球平均のIG波の高さの相関係数をとると0.73と強い正の相関があることが分かった。これはSignal-Noise PSDの年周変動のピークをもたらす原因が南半球のIG波であることが示唆される。またNoise PSDと北半球平均のIG波の高さの相関係数をとると0.56と正の相関があることが分かった。これはNoise PSDの年周変動のピークをもたらす原因が北半球のIG波であることが示唆される。