日本地震学会2021年度秋季大会

講演情報

D会場

一般セッション » S02. 地震計測・処理システム

AM-2

2021年10月15日(金) 11:15 〜 12:15 D会場 (D会場)

座長:中川 茂樹(東京大学地震研究所)、岡田 知己(東北大学)

12:00 〜 12:15

[S02-04] マルチプラットフォーム次世代WINシステムの開発(1)

〇中川 茂樹1、青山 裕2、高橋 浩晃2、前田 拓人3、内田 直希4、山本 希4、大竹 和生5、鶴岡 弘1、青木 陽介1、前田 裕太6、大見 士朗7、中道 治久7、大久保 慎人8、松島 健9、八木原 寛10、汐見 勝彦11、植平 賢司11、上田 英樹11、宮岡 一樹12、溜渕 功史13、本多 亮14、関根 秀太郎15 (1.東京大学地震研究所、2.北海道大学、3.弘前大学、4.東北大学、5.東京大学システムデザイン研究センター、6.名古屋大学、7.京都大学、8.高知大学、9.九州大学、10.鹿児島大学、11.防災科学技術研究所、12.気象庁、13.気象研究所、14.神奈川県温泉地学研究所、15.地震予知総合研究振興会)

1.はじめに
 地震・地殻変動等の時系列データの伝送や験測処理に広く用いられているWINシステム(卜部・束田,1991;卜部・束田,1992;卜部,1994など)は,開発から25年以上が経過しUnix上のX-window環境でなければ動作しないという制限があるにも関わらず,代替となるソフトウェア群がないために大学等の基幹システムとして使い続けられており,伝送系や自動処理系における設定等は扱いに熟練したスタッフの口伝や試行錯誤に大きく依存しているのが現状である.特に現在の対話験測処理ソフトウェアは機能向上を図ることが難しく,験測処理の高度化や迅速な情報発表を図る上での障害となりつつある.一方,この四半世紀で,ハードウェアの性能が大幅に向上したほか,マルチプラットフォームに対応した言語や対話処理に優れた入力デバイスの開発・淘汰が進み,ハードウェア環境に依存しないソフトウェア群の構築が可能になってきた.そこで,WIN形式データのリアルタイム伝送が機関の枠を超えた全国規模のデータ流通の基盤となっていることを踏まえ,定期的に更新が進められてきた防災科研や気象庁のデータ伝送システムや対話験測処理システムを参考にしながら,マルチプラットフォームのソフトウェア群(次世代WIN)の開発を進めることとした.

2.現行システムの課題と次世代システムへの要望
 開発を進めるにあたり,まず,現WINシステムにおける課題と次世代システムへの要望の意見集約を行った.WINシステムに関連の深い研究者や技術者にメール等によりアンケート調査を実施し,18機関(北海道大学,東北大学,東京大学,名古屋大学,京都大学,高知大学,九州大学,鹿児島大学,琉球大学,防災科学技術研究所,神奈川県温泉地学研究所,気象庁,気象大学校,地震予知総合研究振興会,企業4社)から回答を得た.
 調査の結果,次のような課題と要望が寄せられた.昨今の観測網の高密度化に伴うデータ量(チャネル数)の増大,観測項目の多様化,通信の高速化,再送機能の充実,高精細かつ多色表示可能な操作環境への対応が検討事項として挙げられていた.また,WINシステムでは標準的にhypomh (Hirata and Matsu’ura, 1987)が震源計算に使われているが,それ以外の震源計算プログラムや他の解析プログラム(メカニズム解析など)への対応,WINシステムのチュートリアルの充実なども課題として挙げられていた.

3.対話験測処理系システムの試作と今後の展望
 前項の調査を参考にして,次世代の対話験測処理系システムの試作を開始し,対話検測ソフトウェアの基礎部分を作成した.最大の特徴は,1つのソースコードからUnix (Linux, FreeBSD),Windows,macOS の複数プラットフォーム上で動作するネイティブバイナリをそれぞれの環境下でコンパイルできることである(図).現在は,波形表示と手動験測の最小限の機能しか備えていないが,今後の機能拡張が可能な設計となっている.
 今後は,この試作したプログラムを基にして,震源決定プログラムなどの外部コマンド実行機能などの実装を進めていきたい.また,伝送系システムの仕様について検討を進めたい.

謝辞:本研究では,国立研究開発法人防災科学技術研究所,北海道大学,弘前大学,東北大学,東京大学,名古屋大学,京都大学,高知大学,九州大学,鹿児島大学及び気象庁の地震観測データを用いました.ここに記して感謝します.なお,本研究は文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」の支援を受けました.