日本地震学会2021年度秋季大会

講演情報

B会場

一般セッション » S08. 地震発生の物理

AM-2

2021年10月16日(土) 11:00 〜 12:15 B会場 (B会場)

座長:吉田 圭佑(東北大学)、直井 誠(京都大学防災研究所)

11:15 〜 11:30

[S08-19] スペクトル比を用いた2000年鳥取県西部地震震源域におけるダブルカップル地震と非ダブルカップル地震の震源特徴の推定

〇本越 拓実1、松本 聡2、飯尾 能久3、酒井 慎一4、加藤 愛太郎4 (1.九州大学大学院理学府 地球惑星科学専攻、2.九州大学大学院理学研究院付属地震火山観測研究センター、3.京都大学防災研究所、4.東京大学地震研究所)

通常の断層運動(ダブルカップル型地震:DC地震)では説明できない地震を非ダブルカップル型(NDC)地震と呼ぶ。NDC地震は、これまで主に火山地域や地熱地帯で報告されており、NDC成分は、断層の破壊の複雑さや流体の存在などを示すものとして考えられている。NDC地震の研究は、断層運動のプロセスや地震の発生機構を理解するために重要であり、地殻の応力や強度に関する新しい情報を得る機会を提供すると考えられる。
2000年に発生した鳥取県西部地震震源域では様々な研究がされており、この地域では2017年3月から2018年4月まで1000点の地震計を設置する観測が行われた(0.1満点地震観測)。Hayashida et al. (2020) は0.1満点地震観測網の地震計と定常観測点であるHi-net観測点の記録を用いてP波の走時と極性を読み取り、震源決定を行った。発震機構解を推定すると節面やヌル軸付近にDCでは上手く説明できない極性分布があり、内陸地震発生場でNDC地震が観測されたことが示された。本研究は、P波のスペクトルからNDC地震とDC地震の特徴を比較することで、NDC地震への理解を深めることを目的とする。
本研究では、NDC地震とDC地震について、観測点ごとにP波到達時間前後のスペクトルを求め、これらをコーダ波のスペクトルで規格化することで、各観測点のスペクトルの特徴を見た。また、震源球上でP軸、T軸を通る観測点を選択し、スペクトルの変化を確かめた。観測点選択の際はコーダ波/ノイズのスペクトル比が2以上となる周波数が多い観測点を選択した。
解析の結果、DC地震とNDC地震で震源スペクトルに大きな違いは見られなかった。そのうえ、地震によってはノイズが大きく、広い周波数域でスペクトルの特徴を正確に見ることができなかった。そのため、近接するDC地震とNDC地震について、各観測点のP波スペクトルとその比の特徴をみたが、同様に観測点の位置とスペクトルの関係は見られなかった。今回は少数の地震について震源スペクトルの特徴を確認したため、今後はより多くの地震とDC地震・NDC地震の組み合わせの震源スペクトルの特徴を確かめることで、NDC地震の発生過程を考察していく。