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[S09P-19] 地震活動異常の視覚化ー複数手法による比較
地震活動の変化を客観的に検出する方法として,震源分布そのものではなく地震活動の静穏化・活発化現象の視覚化を目的としたZMAP[Wiemer and Wyss (1994)]が開発されている.また同様の目的で,松村の方法[松村 (2002)]および eMAP[吉川・他 (2017]が開発されている.これらの方法の地震活動の変化に対する特性が明らかでなかったことから,吉川・他(2021)は3つの方法において地震活動に同じ変化を与えた場合の解析結果を比較した.それによると松村の方法とZMAPは地震活動の変化に対してほぼ同様に変化に応じた定量的性質を示す一方,eMAPは定性的ではあるが地震活動の変化をより高感度に捕捉できる結果を示した.この発表では,1995年1月17日の兵庫県南部地震(M7.3)発生前の地震活動の事例を用いて3つの方法による解析結果を比較した結果を示し,視覚化表示の有効性を再確認する. それぞれの解析方法には基本的な違いがある.地震活動の基準期間と評価期間を設定することは同様であるが,ZMAPは両期間の地震計数率の相対差(Z値),松村の方法は両期間の地震計数率の相対比をそれぞれ用いるのに対して,eMAPは両期間の地震計数率に基づくポアソン確率を用いる.また地震活動を把握する領域に関しては,ZMAPと松村の方法では等間隔の円形および矩形要素をそれぞれ用いるのに対し,eMAPでは個々の震源位置を中心とする円形要素を用いる. 今回の調査は,気象庁震源カタログで近畿地方とその周辺における地殻内のM2.2以上の震源を対象とした.図は,1986年1月から1991年12月までの期間を基準に,1992年1月から1994年12月までの期間の活動変化を示す.いずれの解析結果も淡路島付近を中心とする静穏化域とそれを囲む活発化域を示しており,いわゆるドーナツパターンを示す.3者を比較するとZMAPは地域的な詳細変化を最も明確に表すことが分かる.またeMAPは静穏化・活発化域のコントラストを最も明確に示すのが明らかである. 以上の事例から,地震活動の視覚化は異常変化の客観的把握に効果的な方法であり,複数の解析手段を同時に適用することは評価の信頼性を確認するのに役立つということができる.