2:15 PM - 2:30 PM
[S12-01] Regional stress field in the northern Kinki district investigated by dense seismic observation
近畿地方の北部には、有馬-高槻断層帯、三峠・京都西山断層帯、花折断層帯、琵琶湖西岸断層帯などの活断層が分布しており、日本で活断層が集中している有数の地域の一つである。これらのうち、有馬-高槻断層帯は、北側の北摂山地と、南側の大阪平野や六甲山地の境界部に沿って、ほぼ東北東-西南西に延びる活断層帯である。その長さは、高槻市街地北部から神戸市北区の有馬温泉西方まで、約55kmある。有馬-高槻断層帯の南西側には、兵庫県南部地震(1995 M7.3)を引き起こした六甲・淡路島断層帯があり、断層帯の近傍では、大阪府北部の地震(2018 M6.1)が発生した。
有馬-高槻断層帯の北側の丹波地域では、活発な微小地震活動が長期間継続している。この地震活動は大地震の後の余震活動とは異なっている。また、特定の断層の近傍で発生しているのではなく、広い範囲で発生している。地震活動には地殻内流体が関連していることが示唆されており、近畿地方北部における下部地殻内のS波の反射面の解析を通して、断層帯深部の地震学的構造の解明がなされてきている(Aoki et al., 2016;Katoh et al., 2018)。
近畿地方北部は近畿三角帯の西縁側の一部に位置し、また、新潟-神戸歪集中帯の南西端の一翼を担う場所でもある。したがって、広域のテクトニクスを考察する上でも重要な場所である。地殻の応力の状態をより正確に把握することは、考察を深めるために欠かせないだけではなく、将来の地震活動を予測する上でも極めて重要である。
琵琶湖西岸から丹波山地周辺には、2008年以降、満点システムと名づけられた、80点を超える稠密観測網が整備されてきている(三浦ほか, 2010)。平均観測点間隔は約5kmで、従来の定常観測網の約20kmと比較するとはるかに稠密である。近畿地方北部の応力場については、既に藤野・片尾(2009)や青木ほか(2012)により解析がなされているが、この満点システムから得られた多数のデータ、および周辺の高感度定常観測点から得られたデータを用いて、応力場の解析を行った。解析に用いた地震は北緯34.4~35.7°、東経134.5~136.6°の範囲内で2008年11月から2018年3月までに発生した約2万個の地震である。一つのメカニズム解を求める際に地震の観測点の下限は15とした。メカニズム解に複数の解がある場合は10個以下の場合のみを用いた。インバージョン解析においては、以下のパラメータなどで解析した。
Kagan角の最大値:35°、Score値の最小値:0.9、グリッド内の地震数:16以上50以下、
グリッドの大きさ:x軸10km、y軸10km、z軸2.5km
これらのうち、z軸(鉛直)方向の距離については、応力の上下方向の変化を詳しく調べるために2.5kmに設定した。藤野・片尾(2009)は、深さ、東西、南北とも10kmの立方体を解析対象としたが、2.5km間隔で設定できたのは、稠密観測網により膨大な数の地震波形データが得られたからである。解析に際しては、変化の連続性を保つため、原則としてグリッドの大きさの半分ずつの距離を移動させ、各データを2回使用した。
地殻にはたらく最大主応力の方位は、西南日本では一般的に東西方向である。しかし、有馬-高槻断層帯の主部は、かなり東西に近い走向の横ずれ型の断層であり、広域的な応力場とは必ずしも調和的でないように見える(飯尾, 2020)。大阪府北部の地震の後の余震観測などによると、P軸の方位は、東-西方向だけでなく、南東-北西方向にも向いていることが計測されている(飯尾, 2020)。
本研究の結果、有馬-高槻断層帯付近にある、大阪府北部の地震の震源地付近の最大主応力の方位は、深度10kmの地点において、東-西方向から、南東-北西方向に、時計回りに20°回転していた。また、丹波地域でも角度は異なるが、時計回りに回転している場所があった。応力方位の上下方向での変化については、有馬-高槻断層帯周辺では、地震の発生深度が限られていて数も少ないので、推定は困難であった。一方、丹波地域ではより深い場所でも発生し数も多いので、上下方向での変化も推定できた。その結果、特徴的な変化を示す場所があることも分かった。一例として、大阪府北部の地震の震央点の北方40kmの地点から東方に20kmにわたる範囲の地域では、深度が7.5、10、12.5kmと深くなるにつれ、応力方位が時計回りに回転していた。角度は、東を基準として時計回りの方向を正とした場合、7.5kmでは-10または-15°、10kmでは10°、12.5kmでは15°であった。
最大主応力方位の角度の変化を引き起こす要因については、詳しい分析を今後継続して行う予定である。
有馬-高槻断層帯の北側の丹波地域では、活発な微小地震活動が長期間継続している。この地震活動は大地震の後の余震活動とは異なっている。また、特定の断層の近傍で発生しているのではなく、広い範囲で発生している。地震活動には地殻内流体が関連していることが示唆されており、近畿地方北部における下部地殻内のS波の反射面の解析を通して、断層帯深部の地震学的構造の解明がなされてきている(Aoki et al., 2016;Katoh et al., 2018)。
近畿地方北部は近畿三角帯の西縁側の一部に位置し、また、新潟-神戸歪集中帯の南西端の一翼を担う場所でもある。したがって、広域のテクトニクスを考察する上でも重要な場所である。地殻の応力の状態をより正確に把握することは、考察を深めるために欠かせないだけではなく、将来の地震活動を予測する上でも極めて重要である。
琵琶湖西岸から丹波山地周辺には、2008年以降、満点システムと名づけられた、80点を超える稠密観測網が整備されてきている(三浦ほか, 2010)。平均観測点間隔は約5kmで、従来の定常観測網の約20kmと比較するとはるかに稠密である。近畿地方北部の応力場については、既に藤野・片尾(2009)や青木ほか(2012)により解析がなされているが、この満点システムから得られた多数のデータ、および周辺の高感度定常観測点から得られたデータを用いて、応力場の解析を行った。解析に用いた地震は北緯34.4~35.7°、東経134.5~136.6°の範囲内で2008年11月から2018年3月までに発生した約2万個の地震である。一つのメカニズム解を求める際に地震の観測点の下限は15とした。メカニズム解に複数の解がある場合は10個以下の場合のみを用いた。インバージョン解析においては、以下のパラメータなどで解析した。
Kagan角の最大値:35°、Score値の最小値:0.9、グリッド内の地震数:16以上50以下、
グリッドの大きさ:x軸10km、y軸10km、z軸2.5km
これらのうち、z軸(鉛直)方向の距離については、応力の上下方向の変化を詳しく調べるために2.5kmに設定した。藤野・片尾(2009)は、深さ、東西、南北とも10kmの立方体を解析対象としたが、2.5km間隔で設定できたのは、稠密観測網により膨大な数の地震波形データが得られたからである。解析に際しては、変化の連続性を保つため、原則としてグリッドの大きさの半分ずつの距離を移動させ、各データを2回使用した。
地殻にはたらく最大主応力の方位は、西南日本では一般的に東西方向である。しかし、有馬-高槻断層帯の主部は、かなり東西に近い走向の横ずれ型の断層であり、広域的な応力場とは必ずしも調和的でないように見える(飯尾, 2020)。大阪府北部の地震の後の余震観測などによると、P軸の方位は、東-西方向だけでなく、南東-北西方向にも向いていることが計測されている(飯尾, 2020)。
本研究の結果、有馬-高槻断層帯付近にある、大阪府北部の地震の震源地付近の最大主応力の方位は、深度10kmの地点において、東-西方向から、南東-北西方向に、時計回りに20°回転していた。また、丹波地域でも角度は異なるが、時計回りに回転している場所があった。応力方位の上下方向での変化については、有馬-高槻断層帯周辺では、地震の発生深度が限られていて数も少ないので、推定は困難であった。一方、丹波地域ではより深い場所でも発生し数も多いので、上下方向での変化も推定できた。その結果、特徴的な変化を示す場所があることも分かった。一例として、大阪府北部の地震の震央点の北方40kmの地点から東方に20kmにわたる範囲の地域では、深度が7.5、10、12.5kmと深くなるにつれ、応力方位が時計回りに回転していた。角度は、東を基準として時計回りの方向を正とした場合、7.5kmでは-10または-15°、10kmでは10°、12.5kmでは15°であった。
最大主応力方位の角度の変化を引き起こす要因については、詳しい分析を今後継続して行う予定である。