The 2021 SSJ Fall Meeting

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Room A

Regular session » S16. Subsurface structure and its effect on ground motion

AM-1

Fri. Oct 15, 2021 10:00 AM - 10:30 AM ROOM A (ROOM A)

chairperson:Yosuke Nagasaka(Port and Airport Research Institute), Kimiyuki Asano(Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University)

10:00 AM - 10:15 AM

[S16-01] A theoretical basis for the applicability of seismic interferometry

〇Yosuke NAGASAKA1, Atsushi Nozu1 (1.Port and Airport Research Institute)

Sanchez-Sesma and Campillo (2006)やWapenaar and Fokkema (2006)は2地点の相互相関と厳密なグリーン関数を結びつけるための地震波干渉法の定式化を示しているが,そこでは波動場についていくつかの仮定が必要であり,その1つとして,S波とP波のエネルギー密度の比が2(VP/VS)3となるという仮定が用いられている.この仮定の妥当性については,過去にも研究がなされているが,未解明な点も残されている. Weaver(1982)は拡散波動場をある周波数周辺に固有周波数を持つ各モードが平均的に等しいエネルギーを持つような波動場と定義している.このとき,S波とP波のエネルギー密度比は各固有モードの数の比と等しくなり,これが2(VP/VS)3となることを説明している.しかし,エネルギー密度比が2(VP/VS)3でない状態から出発して最終的に2(VP/VS)3となるためには固有モード間のエネルギー交換が必要であり,このエネルギー交換が弾性方程式を満たしながらどのように行われるかについてはWeaver(1982)は示していない. 一方,Ryzhik et al. (1996)やPapanicolaou et al. (1996)は弾性波の放射輸送方程式を用いて多重散乱によるS波とP波のエネルギー交換について調べた.その結果,ランダムな媒質の内部では多重散乱により初期条件に関わらずエネルギー密度比は最終的に2(VP/VS)3となることを示した.しかし,自由表面や媒質境界の影響については論じておらず課題であると述べている. 自由表面の影響に最も迫った研究はEgle(1981)の研究である.Egle (1981)は自由表面を持つ一様弾性体を考え,拡散波動場を様々な方向に伝播するランダムな平面波の重ね合わせとして定義して考察している.Egle (1981)による拡散波動場の定義は,Weaver(1982)によるものと比べより直観的で分かりやすく,また,反射の影響を考慮しやすい形となっている.Egle (1981)は自由表面にランダムに入射する平面波がPS変換,SP変換を繰り返すことでエネルギー密度比が一定の値に収束することを示したが,Egle (1981)が数値的に求めた値は2(VP/VS)3とはわずかに異なっていた.Weaver(1982)はその違いを数値誤差によるのではないかと考えたが,その真偽は明らかとなっていない. そこで本研究では自由表面が弾性波のエネルギー密度equipartitionに与える影響をより厳密に理解することを目的とし,Egle(1981)の条件に従う波動場のS波とP波のエネルギー密度比が2(VP/VS)3に収束することを解析的に示す. 媒質は自由表面に囲まれた一様弾性体とし,波動場はランダムな位相を持つ平面波の重ね合わせとして表現されるものとする.異なる進行方向,タイプ(S波,P波),周波数を持つ平面波は互いに無相関とする.Egle(1981)の検討によれば,このとき,自由表面での反射によるモード変換を繰り返すことで,S波とP波のエネルギー密度比(Rとする)はR=(γLTVp)/(γTLVs)で表される.ここでγLTは単位時間あたりの自由表面への入射P波のエネルギーに対する反射S波のエネルギーの比率,γTLはその逆の変換におけるエネルギーの比である.γLTとγTLはあらゆる入射角を考慮した平均的なモード変換の割合である.特に反射波については自由表面における反射係数の2乗を入射角について積分することが必要であり,解析的な検討がなされなかった理由の1つであると推測される.しかし,Rを求めるにはγLTとγTLの比率を求めればよく,それぞれを解析的に求める必要はない.本検討ではまずEgle(1981)で示されていなかったγLTとγTLの表現を求め,これらについて比較的単純な変数変換を行うことにより直接積分を行うことなくRを積分を含まない形で表せること,それが2(VP/VS)3となることを示した. 本検討により,自由表面をもつ一様な弾性体内におけるランダムな平面波による波動場は地震波干渉法の定式化におけるエネルギー密度比に関する条件を満たすことが示された.自由表面での反射と多重散乱はS波とP波のエネルギー密度について同じ効果を持つことになる.自由表面での反射または散乱によりSP変換とPS変換が繰り返されることが本質的なメカニズムであると考えられる.従って自由表面を持つランダムな媒質内においても波動場は上記の比率を満たすことが期待できる.自由表面だけでなく異なる媒質の境界の影響についても検討を行う必要があり,これについては今後の課題である.