日本地震学会2021年度秋季大会

講演情報

B会場

特別セッション » S23. ベイズ統計学による地震データの解析と数理モデリングの深化

AM-1

2021年10月14日(木) 09:00 〜 10:30 B会場 (B会場)

座長:加藤 愛太郎(東京大学地震研究所)、長尾 大道(東京大学地震研究所)

10:00 〜 10:15

[S23-05] 相互情報量と相関係数の積を用いたマッチドフィルタ法による深部低周波地震の検出

〇栗原 亮1、加藤 愛太郎1、倉田 澄人2、長尾 大道1,2 (1.東京大学地震研究所、2.東京大学大学院情報理工学研究科)

マッチドフィルター法は、深部低周波地震のような微小地震の検出によく用いられる手法である。従来の手法では、テンプレート地震の波形と観測データの間の相関係数を計算し、その総和を基準として、閾値を超えた場合に検出となる。しかし、従来の方法では地震観測点が少ない場合には検出精度が大幅に低下するという欠点があった。本研究では、テンプレート波形とターゲット波形の類似性を測定するために、CCに加えて相互情報量を採用し、その積を基準とすることにより、1つの地震観測点のみでも深部低周波地震を精度よく検出することに成功した。まず、人工ノイズと深部低周波地震の波形からなる合成データセットに対して、相互情報量と相関係数の積を計算し、その時間推移を調べた。その結果、ノイズデータとして非周期的なノイズであるガウシアンノイズを利用した場合、周期的なノイズである正弦波ノイズを利用した場合の両方のケースについて、ノイズ部分には高い値を示さず、地震信号に対応する明確なピークを示すことがわかった。次にこの手法を日本で最も活発な火山の一つである霧島火山の観測データに適用したところ,2010年12月のデータから354の深部低周波地震が検出された。利用した観測点は防災科学技術研究所Hi-netのN.SUKH観測点である。この期間には気象庁のカタログの深部低周波地震はわずか2つしか検出されていない。今回構築した深部低周波地震のカタログは、従来のマッチドフィルター法(火山近傍の6観測点の相関係数の和を用いる方法)で得られたものと同様の時間的挙動を示している。提案された手法は、従来の方法で構築されたカタログに含まれる地震の約80%を識別することに成功した。相関係数と相互情報量の積を用いて検出した結果では、1観測点で相関係数のみ、相互情報量のみを用いて検出を行なった場合に比べても一致度が高い。これらの結果は、提案した手法が1つの地震観測点のみを用いて、深部低周波地震の正確なカタログ作成に大きく貢献できることを示唆しており、強い信号が少数の観測点でしか観測されない微小な地震の検出や観測網の網羅性が低い地域などでの検出に利用できると考えられる。