日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

D会場

一般セッション » S07. 地球及び惑星の内部構造と物性

[S07] AM-1

2022年10月26日(水) 09:45 〜 11:00 D会場 (5階(520研修室))

座長:古屋 正人(北海道大学)、久家 慶子(京都大学)

10:15 〜 10:30

[S07-03] 波形インバージョンによる中米下D″領域の三次元S・P波速度同時構造推定

*佐藤 嶺1、河合 研志1 (1. 東京大学)

地球深部の深さ約2900kmに位置する核-マントル境界(CMB)は、固体岩石のマントルと液体鉄合金の外核が接する、地球内部の最も主要な熱・化学(物質)境界の一つである。そのため、最下部マントル領域(D″領域)の詳細な構造推定は地球の熱・化学進化の理解に欠かせない。D″領域内部にて化学進化を起こす主要な要因として、(A)熱境界層の地温勾配とマントル物質のソリダスが近接することに伴う部分溶融 (Garnero+ 2008)と、(B)海洋プレートの沈み込みに伴う海洋地殻成分の剥離および濃集 (Tackley+ 2011)、の2つが提案されている。これらの現象を検出するためには、D″領域内部を解像できる解像度(鉛直方向に100km以下)で構造推定を行う必要がある。また、地震波速度に対する温度と化学組成の効果を分離するためには、S波速度(Vs)及びP波速度(Vp)の不均質構造を同程度の解像度で同時に推定することが必要である(Masters+, 2000)。これまでのD″領域のVs・Vp構造同時推定では、地震波走時をデータとして扱ってきたが、D″領域を伝播する地震波のデータ量のばらつきによりVsとVpで解像度が異なっていた(Houser+ 2008等)。そこで本研究では、波動理論に基づき地震波形のもつ全情報を引き出すことで詳細に構造推定を行える局所的三次元波形インバージョン法(Kawai+, 2014等)を拡張することで、高解像度かつ同程度の解像度でのVs・Vp構造同時推定を行える手法の開発を目指した。開発した手法に北米で緻密に展開されているUSArray観測網のデータを適用することで、中米下D″領域における三次元Vs・Vp構造の同時推定を実行した。本発表では、推定されたモデルとその妥当性についての議論を行う。