日本地震学会2022年度秋季大会

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A会場

一般セッション » S08. 地震発生の物理

[S08] PM-1

2022年10月25日(火) 14:00 〜 15:00 A会場 (1階(かでるホール))

座長:立岩 和也(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)、吉田 圭佑(東北大学)

14:00 〜 14:15

[S08-04] 日本のマグニチュード7級地震を例とした余震域拡大速度の定量化:差応力計としての可能性

*三井 雄太1、宇田川 裕矢2 (1. 静岡大学理学部地球科学科、2. 元・静岡大学理学部地球科学科)

2004年パークフィールド地震(M6)や2010年バハ・カリフォルニア(エルマヨール・クカパ)地震(M7.2)では、本震からの経過時間の対数に比例する形で余震域拡大が生じた(Peng and Zhao, 2009; Ross et al., 2017)。背景にある物理メカニズムの候補として、本震の余効すべりによる余震誘発が考えられている。余効すべりの伝播について多くの理論的研究が行われている(e.g., Ariyoshi et al., 2019)一方で、余震域の拡大速度についての定量的理解は必ずしも進んでいない。そこで本研究では、日本国内で発生した複数の大地震を例として、余震域の拡大速度を比較・検討する。

気象庁の地震カタログデータに基づき、2000年以降のマグニチュード6.9-7.4の地震を本震とした上で、本震から100日以内に震源近傍で発生したマグニチュード3以上の地震を余震と定義した。ただし、震源決定精度が低いため余震数が(見かけ上)少なくなっているアウターライズ地震と、大々的な動的誘発現象が生じた2016年熊本地震(e.g., Uchide et al., 2016)、さらにマグニチュード8以上の巨大地震直後の地震は、研究対象の本震から除外した。余震域の拡大を評価するために、本震震源からの3次元的な距離を用いた。この3次元距離を縦軸、本震からの経過時間(対数)を横軸としたグラフ上で、余震域が拡がる様子を確認できる。拡大速度についてデータからの自動推定を行うため、経過時間を時間窓に分割した上で、外れ値を除去し、各時間窓の中で本震震源から最も遠い点を回帰する、というアルゴリズムを開発した。

解析の結果、余震域の拡大速度(対数時間に対する)と、余震から推定したGutenberg-Richter則のb値との間に、-0.7を超える強い負の相関があることがわかった。一方、拡大速度と本震の深さや大きさとの間に相関はないこともわかった。既存の経験的関係(Scholz, 2015)と合わせ、余震域の拡大速度から差応力を推測する関係式(差応力計)を得た。この式は、差応力が高いほど余震域の拡大速度が大きいという点で、力学的に合理的と考えられる。さらに、拡大速度は、本震がプレート境界地震の場合に大きく、プレート内地震の場合には小さい、という傾向が見られた。このことは、プレート境界地震の余震域がプレート内地震の余震域よりも高い差応力環境下(本震後)にあることを示唆するが、プレート境界地震とプレート内地震との断層成熟度の違いなど他の要因の影響も考えられる。また、以上の結果は、拡大速度の自動推定結果に依存している。この自動推定アルゴリズムは簡易的なものであり、改善の余地が残っているため、この点についての議論も行う。