2:30 PM - 2:45 PM
[S08-06] Stress drops of small earthquakes off the east coast of Ibaraki and Chiba Prefectures: Heterogeneity in frictional properties on the subducting Pacific Plate
1. はじめに
茨城県・千葉県東方沖では、太平洋プレートの沈み込みに伴う地震が定常的に多数発生しており、1677年にはマグニチュード(M)8.0以上であったと推定される延宝地震も発生している。本研究では、2003年1月から2019年12月に茨城県沖・千葉県東方沖で発生した小地震 (4.0 <= Mw <= 5.0) のうち、2. で説明するとおり、太平洋プレートの摩擦特性を反映していると考えられる地震について、応力降下量を解析した。
2. 解析対象地震と解析手法
2003年1月から2019年12月に茨城県沖・千葉県沖で発生した 4.0 <= Mw <= 5.0 の地震のうち、太平洋プレート上面から±15 kmの深さの地震を対象とし、Hi-net (防災科学技術研究所)の速度波形記録を用いて、応力降下量を解析した。 解析手法は、Yamada et al. (2021) と類似の手法を用いた。まず周波数領域において、各解析対象地震の速度波形を、それに最も震源の近いMw 3.5の地震の観測波形(以後、経験的グリーン関数と表記する)で除し、観測点ごとにスペクトル比を求めることにより、両地震の震源特性の比を取得した。次に、地震の震源スペクトルはオメガ2乗モデル(Boatwright, 1978)に従うと仮定し、スペクトル比から解析対象地震および経験的グリーン関数のコーナー周波数を求めた。そして、Madariaga (1976) の円形断層モデルに従って、コーナー周波数から解析対象地震の応力降下量を推定した。この操作を解析対象地震すべてについて実行した。
3. 結果および考察
緯度経度0.1度ごとに平滑化した応力降下量の解析結果を図1に示す。P波、S波ともに、千葉県沖に比べて、茨城県沖で応力降下量が大きい傾向がみられた。また、結果を注意深く観察すると、その空間不均一性があることが分かる。さらに、2011年東北地方太平洋沖地震の大すべり域 (Iinuma et al. 2012) で発生した小地震は、大きな応力降下量を持つことも明らかとなった。これは、先行研究と調和的であり、小断層の応力降下量がその場の摩擦特性を反映し、応力降下量の大小関係が剪断強度のそれに対応しているという主張を支持する。図1中の領域Aはアスペリティとされる領域で、応力降下量が比較的大きい小地震が発生しており、一方、図1中の領域Bの海山がある領域では、応力降下量が小さい地震が発生している。これは、アスペリティの存在と応力降下量の値が対応していると考えられ、また、海山自身がアスペリティになるわけではないというMochizuki et al. (2008)の考えと調和的である。さらに、図1中の領域Cは1667年延宝房総沖地震の震源域(羽鳥, 1975)に相当し、領域C内での小地震の発生数が少ないこと、領域Cの西端では応力降下量が比較的小さい地震が発生していることが分かった。これは、領域Cおよびその周辺の剪断強度が小さいことを示唆していると考えられ、1667年延宝房総沖地震が津波地震であったと推定されていることと調和的である。
茨城県・千葉県東方沖では、太平洋プレートの沈み込みに伴う地震が定常的に多数発生しており、1677年にはマグニチュード(M)8.0以上であったと推定される延宝地震も発生している。本研究では、2003年1月から2019年12月に茨城県沖・千葉県東方沖で発生した小地震 (4.0 <= Mw <= 5.0) のうち、2. で説明するとおり、太平洋プレートの摩擦特性を反映していると考えられる地震について、応力降下量を解析した。
2. 解析対象地震と解析手法
2003年1月から2019年12月に茨城県沖・千葉県沖で発生した 4.0 <= Mw <= 5.0 の地震のうち、太平洋プレート上面から±15 kmの深さの地震を対象とし、Hi-net (防災科学技術研究所)の速度波形記録を用いて、応力降下量を解析した。 解析手法は、Yamada et al. (2021) と類似の手法を用いた。まず周波数領域において、各解析対象地震の速度波形を、それに最も震源の近いMw 3.5の地震の観測波形(以後、経験的グリーン関数と表記する)で除し、観測点ごとにスペクトル比を求めることにより、両地震の震源特性の比を取得した。次に、地震の震源スペクトルはオメガ2乗モデル(Boatwright, 1978)に従うと仮定し、スペクトル比から解析対象地震および経験的グリーン関数のコーナー周波数を求めた。そして、Madariaga (1976) の円形断層モデルに従って、コーナー周波数から解析対象地震の応力降下量を推定した。この操作を解析対象地震すべてについて実行した。
3. 結果および考察
緯度経度0.1度ごとに平滑化した応力降下量の解析結果を図1に示す。P波、S波ともに、千葉県沖に比べて、茨城県沖で応力降下量が大きい傾向がみられた。また、結果を注意深く観察すると、その空間不均一性があることが分かる。さらに、2011年東北地方太平洋沖地震の大すべり域 (Iinuma et al. 2012) で発生した小地震は、大きな応力降下量を持つことも明らかとなった。これは、先行研究と調和的であり、小断層の応力降下量がその場の摩擦特性を反映し、応力降下量の大小関係が剪断強度のそれに対応しているという主張を支持する。図1中の領域Aはアスペリティとされる領域で、応力降下量が比較的大きい小地震が発生しており、一方、図1中の領域Bの海山がある領域では、応力降下量が小さい地震が発生している。これは、アスペリティの存在と応力降下量の値が対応していると考えられ、また、海山自身がアスペリティになるわけではないというMochizuki et al. (2008)の考えと調和的である。さらに、図1中の領域Cは1667年延宝房総沖地震の震源域(羽鳥, 1975)に相当し、領域C内での小地震の発生数が少ないこと、領域Cの西端では応力降下量が比較的小さい地震が発生していることが分かった。これは、領域Cおよびその周辺の剪断強度が小さいことを示唆していると考えられ、1667年延宝房総沖地震が津波地震であったと推定されていることと調和的である。