日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

A会場

一般セッション » S08. 地震発生の物理

[S08] PM-1

2022年10月26日(水) 13:45 〜 15:00 A会場 (1階(かでるホール))

座長:大久保 蔵馬(防災科学技術研究所 地震津波防災研究部門)、大谷 真紀子(東京大学 地震研究所)

14:00 〜 14:15

[S08-29] 滑り弱化則における妥当な不均質性の検討

*西山 佳範1、麻生 尚文1 (1. 東京工業大学)

断層破壊シミュレーションでは、先見的な情報として断層形状に加え断層面における初期応力および摩擦則が必要になる。その摩擦則には滑り弱化則と速度状態依存摩擦則が主に用いられる。本研究では動的破壊を再現するのに優れた滑り弱化則を用い、その空間不均質性について調べた。滑り弱化則に対する空間不均質性として、Ide and Aochi(2005)では、降伏強度は均質のまま臨界滑り弱化距離Dcに不均質性を与えている。摩擦則の不均質性は、断層上でのミクロな凹凸に起因するものであるから、降伏強度にも不均質性を考慮する必要があり、本研究では降伏強度と臨界滑り弱化距離の不均質性を同時に検討した。

一般に摩擦はマクロな状態量であり、摩擦法則は任意のスケールで相似な関数系であるべきである。本研究では、この自己相似性に着目し、合理的な滑り弱化則の不均質性について精査した。そのために、1次元断層で境界積分法による滑りの時間発展を解いた。摩擦則の不均質性については、ⅰ)降伏強度一定でDcのみに不均質、ⅱ)Dcと強度降下量が比例しながら不均質、ⅲ)Dcと強度降下量が反比例しながら不均質の3つのパターンを考慮した。初期条件の影響を排除するために、定常的な応力ローディングにより複数回の地震を発生させ、5回目以降の地震の滑りと応力に着目した。ある空間スケールで滑りと応力を平均化したものが、そのスケールでの滑り弱化を経験的に表したものであると考えられる。このように様々なスケールについて得られた滑り弱化の経験則が自己相似であることを検証した。特に、a)単一の関数として精度良く求めるか、b)スケール間で共通の関数系で表現できるかの2点において合理性を検証した。

計算の離散化スケールに近いときは、仮定したような直線的な関数を確認できた一方で、大きなスケールで平均化すると、多様な形状の履歴が得られた。不均質性パターンⅰ)とⅱ)では条件a)を満たさない一方で、不均質性パターンⅲ)では条件a)とb)を満たし、マルチスケールで共通の関数系で表現される滑り弱化則を確認することができた。このように単一の関数系に収束した理由としては、不均質性パターンⅲ)では破壊エネルギーが均質に設定されている事に起因していると考えられる。この結果は、滑り弱化則を使用する際には、少なくとも局所的には破壊エネルギーが均質であるような設定が望ましいことを示唆する。また、与えた直線的な滑り弱化則に対し、得られた共通の関数系はハーフガウシアンのような曲線状であり、そのような摩擦則を仮定することの妥当性を示唆する。